ノストロモ

BLUE GIANTのノストロモのレビュー・感想・評価

BLUE GIANT(2023年製作の映画)
3.5
曲も演奏もかっこよく、また演奏シーンの映像演出や音質は流石に力強く作ってあって素晴らしいの一言。特にラストの演奏は圧巻。

ただ全体的な物語の流れ、また音楽のとらえ方については原作漫画を読んだ時にも感じたのと同様な違和感を映画にも感じた。それは例えば、ジャズ演奏を勝ち負けのある競技、あるいは熱いか熱くないかの二元論に終始させるまるで往年のスポ根アニメのようなフレームに押し込んだ上での乱暴な感動の創出であったり、特定の店で演奏する事が物凄くステータスであると衒いも無く描かれていたり、またバンドに関わる周辺人物が余りにまっすぐにジャズや主人公バンドの演奏に自己の人生を重ねて、安直な感動をしすぎているように感じる、ある種ご都合主義的なイメージだろうか。なお他にも、主人公の大がルフィや悟空のように最初から完成された強い人格である事や、雪祈が豆腐屋さんを訪れるエピソードのような幾つかの極端さは、この映画版ではより強調されてしまっているように思う。
あと、ここからはより個人的な感想になるが、自分が原作で一番心動かされた玉田が初めてドラムソロを叩くエピソードが端折られ、ラストライブと統合されている事にもがっかりしてしまった。漫画の第一部でも一番感情移入する人が多いであろう玉田の見せ場をあのように雑にくくってしまう事に、自分と製作陣とのスタンスの合わなさを改めて感じた。(もちろん尺の都合等、色々あるのだとは思うが)

曲や演奏は間違いなくかっこいいし、楽器の音色も素晴らしく良い作品である。ただ、「ジャズを題材とした青春映画」の枠組みから良くも悪くももっと力強く逸脱したものを自分は期待していた。
せめて、もっと時間を掛けて色んな事を丁寧に描けるシーズン制であれば。惜しい作品。
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