rage30

BLUE GIANTのrage30のネタバレレビュー・内容・結末

BLUE GIANT(2023年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

『BLUE GIANT』のアニメ映画化作品。

ジャズを扱った作品という事で、オシャレな映画なのかと思いきや、まるで逆の泥臭い映画でしたね。

登場人物はどれも天才ではなく、努力家ばっかりだし、中でも玉田がドラムを始めて以降は涙腺が緩みっ放しでした。
先行する2人に追いつかんと必死に努力し、ダメ出しを受けても諦めずに続け、最後はソロで叩けるまでに成長すると。
玉田に厳しかった雪祈にもまた挫折が用意され、それを乗り越える姿が描かれます。
天才やエリートの話ではなく、あくまで普通の人間の努力と挫折を描いているので、非常に感情移入がし易かったですね。

バンドの成長物語であり、努力と友情の物語でもあり、青春を描いた物語でもある。
未来の登場人物がインタビューを受けるシーンが挟まれる事で、過去の出来事である事が強調されていたと思うのですが、青春=人生の中でひたすらに夢を追う事を許された期間という、その儚さと煌きを感じさせる作品でもありました。

そして、音楽がテーマの作品という事で、見所になるのが演奏シーン。
アニメで演奏というと、超絶作画でリアルな運指を見せるのが定番ですが、本作はそれとはまるで真逆のアプローチを取っています。
キャラクターをCGで動かしたり、抽象的な描写もあれば、キツい色彩や漫画風の効果線が入ってきたり。
演奏をリアルに再現するよりも、演奏者の躍動感や熱量だったり、音の世界に没頭していく感覚を表現する事に拘ったのでしょう。

感心するのは、そうしたカオスで禍々しい映像が、ある種ジャズの精神をも表しているという事。
次にどんな映像が来るか分からない…というスリルと興奮は、次にどんな音が来るか分からない…というジャズのアドリブ性とも通じていて。
もっと言えば、次に何が起こるか分からない…という人生そのものを表している様にも思いました。

終盤で雪祈が事故に遭うシーンは、正直、お涙頂戴の展開で鼻白む部分もあったんですよ。
でも、上記した様に、次に何が来るのか分からないのが、ジャズであり、人生でもあり。
大事なのは、どんな音が来ても演奏を続けるという事。
例え、それが望まない形だったとしても、どれだけ不恰好だったとしても、その演奏は2度と再現出来ないし、唯一無二の掛けがえのないものであるという事。
それは人生にも同じ事が言えるし、そう考えると、雪祈の事故はジャズの精神…その真髄を伝える為にも必要だったのかもしれません。

原作の評判は聞いていましたが、確かにこれは高評なのも頷けるし、特に芸人界隈でよく話題になっていた事にも納得しました。
芸人のみならず、舞台に立つ仕事をしている人には、より響くものがあるのでしょう。
音楽映画というよりはスポ根漫画に近いものがあるし、青春映画でありつつ「人生とは何か?」という深みも感じさせて。
う~ん、これはもう傑作と言わざるを得ない作品ですね。
rage30

rage30