makotoyoshida

やがて海へと届くのmakotoyoshidaのレビュー・感想・評価

やがて海へと届く(2022年製作の映画)
5.0
終わった後に余韻が残る。いろんなことを語れる映画。確実に言えるのは本作は映画館のスクリーンで観るべき作品だということ。流れる時間も映像も音も映画館のためのものだ。

題名にふさわしく海の映像が素晴らしくて、こんな海を映画の中で初めて観たと感じるほど。
ドローンショット(?)がすごく印象的。海は人間を遥かに超えた永遠の存在であり、みな最後は海に帰っていくのだという感じがする。
海辺にいい感じで風が吹いてるのも良くて、浜辺美波の髪が海の風に揺れてるシーンをうっとり観ながら(映画とは全く関係ないが)ウィンドインハーヘアという美しい名を持つ馬のことを思い出した。

浜辺美波さんってすごく綺麗で素晴らしい女優さんだなあ。いろいろ微妙な表情の変化が見応えあるしこの年頃でしか出せない輝きがあって眩しい。というか『浜辺美波」ってこの映画に出演するために付けたような名前だね笑
とにかく本作のいちばんの魅力がなんと言っても主演の女優さんたち二人であることは間違いない。岸井ゆきのさんも浜辺美波さんも役になりきって役を生きていて素晴らしい。二人のツーショットが尊すぎるよ!(ポスター欲しい)

真奈&すみれがそれぞれに想いを語るスタイルの原作小説をベースにしながらも(というかこの小説を映画化すること自体がすごい)、本作では魅力的な俳優さんたちの演技とか、様々な表情を見せる海の情景とか、ビデオカメラがお守りになっているようなすみれのキャラ設定とか、東北の人々のインタビューシーンとか、若干の映画向けのアレンジも含めて映画ならではの独自の表現が物語の魅力を増していて、なんと言っても原作より主役の二人がイキイキと生きている感じがするのがすごく良い。役への愛を感じるし。

作中のビデオカメラとか留守番電話も印象的。
人の声というのは、写真よりもずっと生々しくその人のことを思い出させてしまうものではないだろうか。
(なお僕は亡き両親のビデオを撮っていなかったことをかなり後悔している。)

どこかに行ってしまって会うことができない人がいて、でもその人の声はビデオや留守番電話に残っていて声を聞けてしまうという状況ではなかなかその人のことを忘れられないというか、その人がこの世界にもう存在しないことが信じられないと思う。自分の一部のように感じていた存在であれば尚更だね。そういうことを映画を観ながら思った。

この作品を観ながら、これまでの中川龍太郎のいろんな作品がこだまのように響いているのが感じられつつ、その上にいろんな新たなチャレンジを重ねてる意欲作だなと思った。その全部がしっくりハマってるかというと正直そうでない部分もあるような気がするし人によってかなり好みが分かれる作品だと思うけれど、僕は観てて楽しかったし、スターシステムの映画を無難にまとめずにけっこう攻めてるのがすごいなと思った。

年寄りの僕的には若い作家のチャレンジングな作品が見たいので嬉しかったです。
中川監督には更に素晴らしい作品を作って欲しいので満点は次回作にとっておこうかなと思ったけどやっぱり満点でいいや。素晴らしく美しい映画です。
makotoyoshida

makotoyoshida