友二朗

やがて海へと届くの友二朗のレビュー・感想・評価

やがて海へと届く(2022年製作の映画)
3.3
「電車は来ないよ」

生きる。生きてゆく。
失って初めて近くなる。

なんだろうこの映画は。
感想の言語化が難しい。

イアホンなしで歩きたくなる。
街の音を人の声を感じたくなる。

海で朝を迎えたくなる。
意味を付けずに涙を流したい。

ポスターになってるシーンはこの上なく良かった。最近観た映画のシーンの中で1番良かったかも。色んな感情が走り抜けていった。長回しだからこそ。

水色の空、水色の海、水色のワンピース。
海にフォーカスがある映画だが、特に空の色彩が心に残った。なんて綺麗な色だろう。

闇と眩しさのアニメーション。
終盤の一連はとにかく切なくて美しくて本当に素晴らしかった。残酷でどこか心地良い。

「側にいたのに何も知らない」
自分で考えてもそうだ。
自分は意外と皆の何も知らない。

浜辺美波について、ごめんなさい触れざるを得ない。流石に可愛いが過ぎる。何事だろうか。3つ目の髪型が好き。すみれみたいなこうゆう人実際にいる。器用に生きているように見えて誰よりも生きる事に苦しんでいる。魅力的であるが故に+のレッテルが積み重なっていく。

「女の子にそんな座り方してほしくない」
いや胡座かく女の子とか最高よ。

「今の方が近い」
「近くにいても遠くに感じる」
この台詞、結構やばい事言ってるがすみれのこの設定の体現は素晴らしかった。それにそれが直接魅力であり悩みであり、考えさせられる。

真奈の家のベランダいいな〜。
大学の勧誘シーンでの真奈の白い革靴めっちゃ可愛い。

民宿でノックするシーン素敵。
確かにそこに生きている。
自分の知ってる人が、自分を知ってる人がそこにいる。自分のために音を立てている。

非常に透明度の高い一本。

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「なんか変な感じ。
 友達のアクセサリーや服って
 普通こんな無防備に見ないから」

「歩くの好き。迷うのも好き」

「恐いけど、生きてるね」
この台詞は凄く好き。

「私達には世界の片側しか見えていない」

「安心ってなんだろうね」
「深く深く愛して、真っ先に選んでくれる人」

「チューニングするだけだよ
 周波数を合わせる。ラジオみたいに」
「なんか自分が嫌いな人に
 なりそうで怖い」

「なんとなくアイツは
 コタニに持ってて欲しい気がする」
「そんなの押し付けだよ。
 すみれの気持ちはすみれにしか
 分からないでしょ?
 皆傲慢だよ」
「皆自分を守るので必死だもんな」
んにゃ?

「今でも聴くんですか?」
「う〜ん、今は分かんないなあ。
 自分がどんな音楽を好きなのか。
 好きだったのか」

「どんな景色を見て死んだのだろう」

「何度も探しに行ったんです。1.2年は
 でも怖くなったんです。
 見つかってほしくないって気持ちと
 見つけてあげなきゃって気持ちと」
この日本語、下手じゃなかろうか。

「ここに彼女がいるとは考えられないんですよね。変わっていくのが当たり前なんでしょうか。本当は私もちょっとずつ忘れてきてるのかもしれません」
「そっか」
真奈の台詞脈絡オカシイし、それに対して「そっか」の一言。そしてそのまま次のシーン。これ変って思うの自分が変なんかな。だいぶヤバく見える。

「空気感は故郷なんだな」

「震災前に戻れるなら
 あの時あの場所にいたあの人に
 もう一度会いたい」

「今でも大好きです」

「どうして映像を?」
「どうしてだろう。
 気休めかもしれないけど
 残して置きたいのかも」

「朝早いんですね」
「久々に夢を見たんだ」
「どんな夢ですか?」
「童歌、聴かせてもらえない?」
いや真奈全く会話する気ないやん。
普通に失礼やからねそれ。

直後童歌のシーンは良かった。
この子がいい子で良かった。

「海で失くしたあの人を待つ唄」

「すみれは?
 行きたい所ある?」
「どうなんだろう、
 今は真奈の部屋にいたいかな」

「カメラがないと喋れないんだろ」
「バレた?」
トウノの捉え方よく分からない。

「自分が思ってるより強い人だよ」
切ない。

「電車は来ないよ」

「そちらからこちらは見えますか?
 こちらは今、晴れています」

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ここからは自分でも嫌なレビューを書くので読まないで下さい。メモとして残しておきます。

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レビューが非常に難しい。
観終わった後の余韻はそれはそれは凄くてしばらく放心してた。だが中身は正直全然好きじゃない。この気持ちはなんだろう。

そもそもあまり面白くない。だがこれは仕方ないし、途中から別に求めてもなかった。それに当然だ。登場人物が全員終始楽しそうじゃない。ずっとしんどそう。それのラストに生まれた自分の気持ちに対しては納得がいった。だからこれでいいとは思う。

たぶん自分の心がちゃんと動いて終わったのはラストとインタビューのシーンのみの影響だ。津波の話だからだ。果たしてそれは評価と言えるのだろうか。

冒頭のレストランシーンの台詞回しがあまりにも普通すぎて珍しくイライラしてしまった。この冒頭に一番感じたが全体を通して台詞のクオリティがあまりにも低すぎたと思う。このシーンになんて台詞を入れる?という問題に誰もが最初に思いつく台詞が永遠と選ばれている。良い台詞もあるが、そのシーンに力を入れている事がヒシヒシ感じられて逆に遠目になってしまう。

台詞選びだけでない、その繋ぎにも疑問がある。シンプルに会話になっていないシーンが多々あった。意味を含ませたかった結果なのかもしれないがだとしても理解しづらいし、個人的には使いたい言葉をただ上から順に並べただけに見えた。

「どうして?」という台詞での疑問の投げかけに対してほとんど答えない。しかも全員。ここまでされると目立つ。

あとワンカットの尺の使い方、長すぎやしないか。別に長いのはいいがそこから何か生まれていただろうか。何も考えることがないシーンをもう少し回想や現地のシーンに回して欲しかった。

更に細かい事を言うが真奈の顔を撮る角度がおかしくないだろうか。これはわざとかな。浜辺美波を映すシーンと比べてあまりにも雑に見える。もっと良い顔を映せたと思う。

あとこれは普通に自分の感性の問題だが、すみれの水色のワンピースを真奈に訳分からん理屈で着せて、それを一目見てどっか行くすみれの母のヤバさに引いた。あのシーンまじで何?真奈も特になんも言わんし特に何かに繋がる訳でも無い。謎の時間。

凄く凄く良い物語だったからもっと各所を濃くすれば素晴らしいものになると思う。

コタニがレストランで選曲する音楽には触れんのかい。結構大事やと思うけどな。
友二朗

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