銀色のファクシミリ

やがて海へと届くの銀色のファクシミリのレビュー・感想・評価

やがて海へと届く(2022年製作の映画)
4.4
『#やがて海へと届く』(2022/日)
劇場にて。原作未読。主人公がずっと抱えている空虚、悲しみ、後悔、疑問の答えを探し、そして様々なことに気づく「喪失と再生の物語」。主人公が徐々に悟っていくクライマックスが忘れがたい。中川龍太郎監督の過去作のいづれとも違う感慨がある秀作でした。

あらすじ。湖谷真奈(岸井ゆきの)には折に触れて思いだす人がいる。大学時代からの親友、卯木すみれ(浜辺美波)。内気な自分とは真逆の社交的な人。なぜ自分と友達になってくれたのだろう。なぜあの夜、泊りに来たのだろう。なぜあの日、もっと話さなかったのだろう。そして今、どこにいるのだろう。

感想。すみれが行方不明になってから5年後。主人公・真奈の職場に、すみれの元恋人が訪れてくるエピソードと、職場でのエピソードを経て、真奈が「不在の空白はすぐに埋まり、その人がいた証拠も消え、記憶も薄れてしまう」ことをかみしめて、ふたたび親友を探す旅に出る…までが前半。

加えて前半では、すみれとの出会いからの追想も織り込まれていて、そこで描かれた真奈の思いと疑問が、ひとつひとつ明らかになるのが後半。「友達になってくれた理由」「世界の片面しか見えない」「安心てなんだろう」「5年も行方不明の理由」「今どこにいるのか」。

ほぼ全てが明らかになるけど、誰も直接的な言葉にはしないのですよ。映像と人々の言動から答えを汲み取る。特に色んなことが一度に明らかになるクライマックスから、なにを感じ、解釈を拡げられるのか。この映画から受ける感慨に大きく関わる点だと思えました。ネタバレなし感想はここでオシマイ。

ちょっとだけ追記。この映画、全編に渡るW主演の岸井ゆきの&浜辺美波の素晴らしさは云うまでもないけど、物語の流れがはっきりと変わる、新谷ゆづみが纏い、伝えてくる雰囲気は、2022年最優秀助演俳優賞モノでした。もっと世に出るべきだし、必ず出てくるだろう俳優さんだと思います。追記もオシマイ。