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やがて海へと届くのエマのレビュー・感想・評価

やがて海へと届く(2022年製作の映画)
4.2
少し時期はズレているものの、東北大震災から10年。2021年は芥川賞候補の作品も東北大震災関連のものが多かった。

本作では東北大震災による津波被害であるかどうかは明言されていないが、浜辺美波が演じる女性は主人公に電話での伝言を残しており、その最後の日が2011年2月○○日なので、恐らく東北大震災の被害を受けたと考えられる。

タイトル通り、残されたものを主体に描いているが、本作は行方不明になっている女性の主観が多く描かれている。これは割と珍しい構成だと思った。
この手の作品はリアリティを求めるが故に「死者に口なし」状態になりがちだが、本作はその逆を行うことで登場人物の関係に立体性を持たせることが出来ている。
となると、ちょいちょい挟まれるアニメーションも頷ける。
リアリティからの脱却、そしてリアリティから逸脱した作品だからこそ描ける真のリアリティではないだろうか。

浜辺美波の役の女性も主人公に対して「この気持ちが届いて欲しい、でも届いて欲しくない」と感じていたのではないか。
その想いは主人公の「見つけたいけど見つけたくない」という言動と繋がっているように思えた。
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