このレビューはネタバレを含みます
寄せては返す細波と泡沫。
弾けて消えて…海へと還る。
大切な人との記憶とか、
自分が此処にいた証だとか…
大凡のことは、そうやって消えていく。
どれだけ尊くても、
耐え難いほどに痛くても…
最後には消える。
自分が無いだなんて、母親にブーメランを投げる…自分のない『すみれ』は、周囲の状況に合わせてチューニングを繰り返す。
そんな大人の代表枠のように、お客さまに合わせた曲を選ぶ…店長の楢原。
そういうの苦手で、生きるの息苦しいって感じの真奈が一番、自分に正直に生きてる。
すみれや楢原の在り方。
近いようで違う、真奈の在り方。
この作品を観た後で、あなたが語るのは?
いなくなった親友の面影を探す物語?
それとも…
居場所を求めて彷徨う女の子のお話?
私は、すみれサイドで観てしまうかな…😅
周囲の人たちの起こす波に飲み込まれて、消えてしまいそうな自分。波に攫われていなくなった『すみれ』には、そんなイメージが透けて見えた。レビュー冒頭のイメージとも重なるから…切ない気持ちになってしまった。
映像に残すって事が…泡が弾けて消えてしまわないように、守ってるみたいだった。
レンズ越しなら耐えられたんだよ。
見えるのは、画面の向こうの世界。
自分はこっち側に『在る』って思えるから。
何の根拠もない、虚勢みたいな存在証明。
だから、レンズが取り払われると…
それが判らなくなってしまう。
無くした自分を拾ってくれた真奈。
この人となら…なんて、垣間見た希望。
だけど…
『ありのままの自分を引き出してくれる人に会えるかもしれないよ』
『いるかも、そういう人』
真奈側に立てば前向きな言葉…
ーきっと、この人がそうなんだ。
すみれ側に立てば悲観的に届く台詞。
ーこの人だと、思ったのにな。
ほんの僅かに足りないだけで…
想いは届かないし、意味も変わってしまう。
そんな風にしか隣り合えない。
これが人間なのでしょう。
ままならない生き物…ですね。
掛け違い、すれ違い…
何度も間違う。
でも、間違えられるのは…
生きているからでもある。
命の使い方は自由だけど…
ただ消えるなんてことは、誰にもできないんだよ。
たとえ、あなたが消えてしまっても…
心に留めている人がいれば、
そこにはあなたがいる。
それもいつかは、泡沫のように消えてしまうのだけど…誰もがそうやって波に溶けて、やがて海へと届くんでしょう。
人の心の在り方みたいな海の描写。
揺蕩う感覚が心地よかった。