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乱れ雲の346のレビュー・感想・評価

乱れ雲(1967年製作の映画)
3.0
うん。うーん。
周りの映画好きとか、昔からこの映画を評価してる人が多くて、
「この映画を観ると、二人が恋に落ちたことが自然と理解できるのに、加害者と被害者の関係性から、二人が愛し合うようになった瞬間がわからない。だから脚本を読んでみたけど、それでもわからないんだ…。不思議だなぁ」なんて、したり顔で言ってた人もいたけど。うーん。

いや、彼らが愛し合うのはわかるよ。二人は被害者と加害者として、周りから理解してもらえない傷を背負った者同士だから。その孤独から救われたいがために、同じ痛みをわかつ人に心惹かれる心理はよくわかる。 物語の筋とは関係ない脇役が色々と二人に干渉するのも、それを浮き立たせる効果を狙ってのものだろうし。
だが、それが、自分に傷をつけた加害者だったという悲劇なわけで。

その葛藤と踏切のくだりは実に映画的で、なんかマディソン郡の橋を思い出した。
そして、その後の、二人の恋愛に影が差し込める絶妙な演出。よかった。

でも、加山雄三は違う。
彼は彼で、あんなに脳天気に愛しちゃいかん。彼こそ、臆病に、それでもすがるように、被害者を愛さなきゃいけなかった。だから、この配役は間違いだし、彼のキャラクターの造形も失敗してると思う。最初からからっとしすぎだよ。それが、お馬鹿さんにみえてしまって。

司葉子はよかったんだよ。ちゃんと彼女には距離感があったし、段階がみえたから。加山雄三は行ったり来たりの変幻自在の距離感で困惑させられた。活劇としては、みてて面白いんだけど、こういう繊細な感情の動きを軸とした物語だと、つらい。雨の傘のシーンだけは良かったけど。あれは熱病に冒されてた芝居だったからかも。だから、全体をあれぐらいのトーンで演じれば良かったんじゃないかなぁ。

でも、これは女の人が鑑賞すると、この加山雄三が可愛い。になるのかもしれないけど…。
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