クスリと吹き出したり、ニヤニヤしたことは数えきれないほどありますが、映画館で声を出しておなかがよじれるくらい笑ったのは、エディ・マーフィーやチャップリン、ましてやバスター・キートンでもなく、ジョン・ベルーシでした。
本作は、相棒とも呼べる、ダン・エイクロイドをはじめ、妻のジュディスや、伝説のバラエティ番組『サタデー・ナイト・ライブ』のメンバーたちの証言を基に描かれた、稀代の天才コメディアン、ジョン・ベルーシの伝記です。
移民であることにコンプレックスを持っていた幼少期から、その裏返しとも言えるショーマン・シップを発揮して、スターダムにのし上がる。
しかし、有名になるにつれ黒い付き合いも増え始め、心の不安も深くなっていきドラックに溺れていき、それが原因で死んでしまう。
観賞して思ったのは、ロックなコメディアンだったんだなということ。
自分が表現したいことには傲慢といえるくらいわがままで、それでいて孤独で、愛されたい願望が誰よりも強かった人。
マーロン・ブランドやジョー・コッカーのものまねから、コメディの脚本、ブルースバンドの活動まで、やりたいことをやり大衆にも受けて、ある程度成功するとまた新しい不安にさいなまれる。
やろうと思ったことが実現できてしまう天賦の才能をもった彼だったが、彼は神ではなく人間だった。
神の調べを奏でたモーツァルトも人間だったように。
破天荒な発言やパフォーマンスで注目された、ロックバンド、ドアーズのジム・モリソンが、ただ一人の妻を愛した人間だったように。
『アニマルハウス』で爆発していた彼に爆笑しながらも、なにか孤独のような影を感じたのは、本作品を鑑賞してみると合点がいった。
『理由なき反抗』で往来に寝転ぶジェームス・ディーンのような憂いのある笑みに。
『ブルース・ブラザース』でのサングラス姿も、彼独特の照れ隠しの手段として生まれたアイテムだったんじゃないかなと思うようになりました。
そういえば、1回だけサングラス外しますよね。その時の目力がすごかったのは、ずっと溜めていたものがあのシーンで爆発したのだと解釈できます。
ドキュメンタリーなので、面白いとかいう性質のものではないですが、記録的価値はとても高い作品だと思います。