木蘭

デリシュ!の木蘭のレビュー・感想・評価

デリシュ!(2021年製作の映画)
4.4
 食事はSEXという事を良く分かったフランス人らしいキュートで豪華な大人のおとぎ話。
 1789年の革命前夜、領主から放逐されたシェフを取り巻く人間模様と料理を通して、変わりゆく時代を美しく芳醇な映像で描く時代劇&料理映画。
 
 居並んだ食材や料理はそれだけで美しく艶があり、それらを静物画の様に映し出していきながら、調理シーンはリズミカル。緩急を付けて飽きさせない。そして、みんな美味しそうに料理を食べるんだな(今の感覚からしたら、食べにくい味らしいのだが)。
 露骨なシーンは無いのだけれど、食事はSEXと同じだよ・・・という、一寸した演出に胸がキュンキュンする。

 コスチュームプレイとしても眼福で、豪華絢爛な貴族の館と調度品、簡素な田舎の館と農具や家具、田舎の風景、当時の衣装・・・は美しい。
 貴族の滑稽な仕草も、フランス映画ならではの様式美。

 ただ、レストランというテーマは話のネタの一つで、史実を元にしたレストラン誕生秘話的なモノを期待してはいけない。そもそも発祥の地はパリだし。

 基本的にはロマンティック・コメディなので、あの時代のリアルなグロテスクさや不潔さ、暴力描写は無い。
 当時の農村だって暴力が渦巻いていたはずだけれども、そういうシーンは描かずに、人々の噂話、そして狡猾だけれども時代の常識を良識として生きている執事の立ち振る舞いで、革命の訪れを示してみせる。

 こんな"オシャレおフランス映画"が観たかったんだろ?という制作者たちのエンタメ心が伝わってくる作品でした。
木蘭

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