フランス革命を直前にしながらも、そんな不穏さはどこ吹く風の貴族の横暴に振り回される料理人とその息子、弟子入りを志願してくる訳ありの女性たちがレストランを開業していくまでを丁寧に描いた、温かくてやさしさに満ちた物語で、楽しめました。
少し頑固者だけれど料理人のプライドを持ち純粋な主人公と、頼りなさそうに見えてだんだんとしっかりとその父を支えていく息子、そしていかにもなにかを隠してやってきて、けれど真剣に料理と雑事を覚えていく女性。個性がバラバラな彼らが、ときに喧嘩をしながらも料理で人をもてなすことに生きる道を見出し協力していく流れが丁寧に自然に描かれていて、素直に引き込まれました。
また、作中の美しくて食欲をそそる料理の数々と、自然が季節とともに彩りを変える風景、そして貴族や庶民たちの服装と、細部にまで時代を再現しようとするこだわりが見え、当時描かれた絵画が精密に動いているようにすら感じられ、この時代の雰囲気にひたるようにも楽しめて、とても良かったです。
