Polly

ラーゲリより愛を込めてのPollyのネタバレレビュー・内容・結末

ラーゲリより愛を込めて(2022年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

唐辛子を大量に入れたらどんな料理も激辛料理になるのと同じで、人の死と動物の頑張りは大抵の人の涙を誘う。だからそれ以外で泣かせてみてよ、と号泣映画を謳う作品に常々中指を立てて生きているので、その要素をダブルで持ってきて号泣必至と銘打つのは興醒めだなぁといくらか斜に構えた状態で観たけど、これが実話ということを考えると何も言えなくなってしまった。戦争って惨い。
終始健人くんもとい新ちゃんの周囲を照らす溌剌とした明るさがこの作品の光だった。暗闇に一筋差す、強烈な光線。実際、新ちゃんの登場シーンからガラッと作品の雰囲気が変わったように感じた。実際に何か決定的な行動を起こすわけではないけど、ゲームチェンジャー的な役割を確かに担っていた。演技でいうと、最後に松坂桃李が涙ながらに山本の母に遺書を読むシーンは筆舌に尽くしがたい良さがあった。ぐったりと堆積した感情が内側から崩れて口からボタボタと床にこぼれ落ちていくような、あのシーンだけでもこの映画を観に行く価値があると太鼓判が押せるほどの見事な演技だった。『万引き家族』の安藤サクラのラストシーンばりに記憶と心に残るシーンでした。

最後の2022年の演出は正直微妙だった。あれがなければ★+0.1にしてたかも。家族を持たぬ者の善なる生き方を示してみせてよと思うのよ。
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