ねこねここねこ

ラーゲリより愛を込めてのねこねここねこのネタバレレビュー・内容・結末

ラーゲリより愛を込めて(2022年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

かなり原作に忠実(意外と原作は短い)
ロシアって今現在も進行形で国際条約的なことは無視したエグい国だよね。プーチンに限らずこんな政治家の温床なんだろうな。

金スマでニノがシベリアに抑留されていた人が語る言葉について、どれほどのトラウマなのかと語っていたけれど、確かに生涯忘れることは出来ないトラウマだろうと思う。帰国してからもずっと悪夢が続いただろうと思うと本当に言葉もない。
彼らにはもはや戦後ではないなどと言う言葉は無縁だろう。

シベリア抑留でも捕虜の生活が(いや、すでに人間の生活とは言えないレベルなのだろうが…)いかに過酷で言語を絶するものだったのかを端的に伝えて来る。飢えと寒さ、課せられる重労働。
軍隊での階級がそのまま捕虜生活でも踏襲される理不尽さ。「貴様ら一等兵ごときが!」と叫ぶ男と「私の名前は山本です」と毅然と言う男。果たしてどちらが哀れなのだろうか?

初めは山本は帰国出来るものだと思ってたけど、最後まで帰国できないんだね。それは観ていてこちらまでショックだった。

それでも山本の希望を捨ててはいけない、必ず生き抜くんだという信念は周りの者を突き動かす力だなと思う。
なんか「ショーシャンクの空に」での主人公を思い出した。「希望は誰にも奪えない」という台詞も。

自分を陥れた上官の原を許し、原から「遺書を書きなさい」と言われて素直に遺書を書き始めた山本の心情を考えるといたたまれないほどの気持ちになった。あの時戻れていたら…。自分なら許せないと思う。

「頭の中のことは奪えない」と山本に言われて文字を覚えた新谷の発案で山本の遺言を4人で暗記するというのは泣ける。1人ずつ訪ねて遺言を伝えるシーンも良かった。誰ひとり欠けても完成しない遺書。それをひとりまたひとりと遺書を伝える帰還兵たち。それだけでどれほど山本が皆の心の支えになり、慕われていたかがわかる。

ニノはもちろんのこと、安田顕などやはり演技が上手いと観ている側も作品に入り込みやすい。
意外にも中島健人の演技がハマっていて少し驚いた(失礼ながら)

映画館で観たので帰りに目が真っ赤になっているリスクも超えて泣いてしまった。
戦争のない時代、戦争のない国に生まれた幸せを当たり前だと思ってはいけないんだなと思わされた映画。