ひいらぎ

ラーゲリより愛を込めてのひいらぎのレビュー・感想・評価

ラーゲリより愛を込めて(2022年製作の映画)
4.4
希望が生きながらえさせる
文化を楽しむ心こそが希望になる
人として生きる

映画の主題はシベリア抑留。実在した山本さんの話をもとにした物語。山本さんは外語大でロシア語を学び満鉄へ入社した。その後徴兵され、終戦時は陸軍の哈爾濱特務機関にいた。そして、ソ連軍に捉えられ終戦後、国際法違反ながらシベリアに抑留された。主に、シベリア抑留での生活、人生がこの映画では描かれる。原作と異なるところは多々あるもののシベリア抑留を知らない人がシベリア抑留とは?を知るきっかけには最適だと思う。

原作を読んだことがあり鑑賞した。最初は映画化と聞いてお涙頂戴に傾倒しすぎないか不安だったが杞憂に終わった。もちろん涙を誘いに来ているのはわかっているが違和感を覚えることなく泣ける。原作から継続しているのは山本さんとクロの部分ぐらいだが、映画創作の登場人物も漫画の他の人物や実際の例をもとにした人々の集合体だと思う。
まず、山本さんとクロにまつわる話が現実であったことに驚きだが、何より戦後数十年経った後に、山本さんを知る人々の証言でこれができたと考えるとより凄さがわかると思う。
映画の中では、希望と文化の大切さが描かれていたと思う。特に、原作では隠れて句会を開催したり手作りの文集を回覧したりといったところで描かれていたが、映画でも句を詠む、野球をする、碁を打つなど文化を楽しむことで生きる活力が生まれている姿があったように感じられた。

個人的には新ちゃんの描写が嬉しかった。なぜならば私の曽祖父も哈爾濱にあったホテルの支配人ながら抑留されている。軍人だけではなかったことが描かれてホッとした。だが、原作にはあったがカットされた部分でもある過酷なラーゲリ生活、強制労働がもっと描かれればよかったと思う。

誰目線で言ってるのかと思われるかもしれないが、この映画きっかけでシベリア抑留について知ろうとしてくれる人が少しでも増えたら大変嬉しく思う。
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