百合ちゃん

ラーゲリより愛を込めての百合ちゃんのレビュー・感想・評価

ラーゲリより愛を込めて(2022年製作の映画)
4.6
昨日映画館で観て、一晩明けた朝、目を覚ましたときに真っ先にこの映画のことを考えてしまうくらい、大きな余韻が残ってる。

山本はあの時代に大学に行ってロシア文学にのめり込んだくらい育ちがよい。俳句や歌や小説で心を耕したから、「人間らしさ」の軸ができていたのかなと思う。きっとそれはあんな状況でもブレないくらいの立派な幹だったんだなあ。

でも、あんな過酷な状況で「希望」がうんぬん言って結局痛い目にあっている山本を見て、桐谷健太みたいに反感を抱くのも、松坂桃李みたいに臆病になるのも、わかる。わかりすぎてしまう。希望を持つこと、信じること、こんなに難しいことはない。だって怖いもん。だめだと思っていた方が楽だもん。人間であることのつらさが自分を苦しめるなんて、なんて状況なんだ。人間なのに人間でない方が楽なんて。

言葉は、その人が抱く壮大な想像や経験や想いをまるっきり伝えることはできないし、葉書1枚ではノート1ページではそれを伝えるなんて不可能。言い切ってしまえるくらい不可能。でも、大切に思っていることや想いの核はきちんと伝えることができる。その力の大きさは、やっぱり偉大だ。言葉の力の制限に苦しみ嘆きながらも、私たちにはやっぱり言葉が必要なんだと思う。

安田顕の絶望の表情......ハマってたなあ〜!全員役にハマりすぎていて、俳優がオレこんな役でこんなことやりたいっすって進言したのではないかと思うくらいハマってた。けんてぃ出てきたときはびっくりした(出てるって知らなかった笑)。

北川景子の大地握りしめ削りとっての「嘘つきぃ!」のシーン、泣いてしまった。危なっかしく栗をむき終わって喜んでいたら魚焦がして結果一尾落とすっていうのもすき(笑)

実話をもとに〜と言われても、さすがにあの主人公の存在とかは映画の演出だろうねと話してたけど、調べてみたらちゃんと実話だった。信じられないけど、本当に本当だったんだ。私たちはまだまだまだまだ知らないことが多すぎる、というか、どんなに生きていても0.0000000......1しか知ることができないんだろうな。自分の狭い世界を生きるために必死だけど、でも、こうやって自分の知らない人生や物語に触れること、知ることは、大切なんだなと思った。心が伸びやかに、「人間らしさ」を思い出せる気がする。

南京虫、トラウマ。