SANTAMARIA

ラーゲリより愛を込めてのSANTAMARIAのレビュー・感想・評価

ラーゲリより愛を込めて(2022年製作の映画)
3.5

前置きが長くなることを
ご了承ください。



筆者はこの作品を鑑賞して真っ先に、もう亡くなって十年近くなる曾祖父のことを思い出した。

なぜなら、
曾祖父(彼)も今作品の主人公たちのようにソ連兵に拘束され収容所(ラーゲリ)で抑留されていた過去があったからである。

筆者が物心がつく前に彼に何度か会って話したことがあるらしいのだが、
残念ながら筆者自身には記憶がない。

筆者の母も、
直接、抑留についての話を一切聞いた事がなかったらしい。

抑留のことはおろか戦争のことも
何も話さなかったらしい。

しかし、曾祖父は祖母に対して幾つか体験した事を話していたらしい。

「とにかく食べ物がなかった。」

「凍土をツルハシで割って道を作るのが仕事だった。」

「ソ連兵に殴られて反対の耳が聞こえにくくなった。」

このような事を話していたらしい。

そして祖母が言うに自分の幼少期にこんな事があったらしい。

近所の人が曾祖父に向かい
「赤だ!(社会主義思想を揶揄又は差別する言い方)」と言われた際に、曾祖父は
人が変わったように怒ったらしい。
普段は穏やかで人に腹を立てることがない曾祖父が人が変わっかのように怒っていたそうだ。

抑留され、日本に帰国後、ソ連に社会主義思想を植え付けられた者として差別され、それをからかわれることが許せなかったんだろうと祖母は話していた。

祖父は義理の父にあたる曾祖父の事をこう話してくれた。

「あの人は、誰にでも温かく 優しく 平等に接し、怒り音一つ立てない人だった。歳を重ねるにつれてすっかりボケてしまったが、ボケてもなお人に腹を立てたり、人の悪口を言わなかった。素晴らしい人だった」と。

自分の曾祖父は何も語らずして亡くなったとばかり思っていた筆者であるが、自分の抑留の体験を誰かに話していたことに驚いた。

その旨を祖母に伝えたところ。

「あの時代は爺ちゃんだけじゃなくて、
多くの人が同じ境遇だった。戦争は悲惨だという事を世界に訴えるのではなく、自分が体験した悲惨なことを誰も口に出して語ろうとはしなかった。もちろん差別されることも理由にあるが、それ以前に語りたがる人がいなかった。だから爺ちゃんは話そうとしなかったんじゃないかな、今は語り継いでいくことが大切な世の中だから語る人が多いけど」と笑いながら話していた。

戦後、多くの人が戦地から日本に帰ってきた。それは兵士だけではない民間人もだ。
筆者が生まれるずーっと昔、それぞれの家族にそれぞれの物語があったんだと思う。

"戦後はもうない"のスローガンのもと
朝鮮戦争による特需で湧き上がる日本と裏腹に強制労働を強いられ戦っていた人のことを思うと忘れてはならない歴史だと感じる。


ちなみに曾祖父は抑留された後、日本に帰国し、市役所の職員として定年まで働いたらしい。会計課の担当としてその計算能力を存分に発揮し、仕事をしていたらしい。

↑この話は筆者の父親が話していた。
自分の実の祖父でもないのに自慢げに話していたのが印象的であった。



長い前置きをおいて作品の評価を…

まずニノの演技力は圧巻であった。過去の出演作「硫黄島からの手紙」で兵士を演じていたがあの頃より、さらに増してオーラが違った。声の出し方や視線の向け方、文句なしの演技であった。

安田顕も良い味出しとる…
気が抜けた演技もさることながら、堂々とした物言い。控えに言って好き…(笑)

松坂桃李も気弱な役であるが良い感じに溶け込んでいて文句なし!
これは桐谷健太も同じ!



良い作品に出会えた。
SANTAMARIA

SANTAMARIA