この物語はシベリア抑留を元にしたものでほぼ事実という作品。
極限の環境の中で希望を失わずに人間らしく生きることはとてつもなく困難です。
同じ抑留生活を描いた「黒パン俘虜記」という作品を読んだことがある。
こちらはモンゴル抑留の話で、日本人同士が歪み合い、一部の人間が略奪や搾取、暴力の限りを尽くしたというもの。
生活自体も筆舌に尽くし難い惨たらしいもので、文章で読んでいても心が痛くなる内容ばかりだった。
希望を失えばこのように、同じ日本人でも殺し合ってしまうのが現実。
しかしこちらの「ラーゲリより愛を込めて」はそのような描写はなく、むしろ日本人同士が仲間意識を持って助け合って生きていたことがすごいと思う。
これも山本幡男氏の、どんな時でも希望を失わない気持ちがそうさせたのかもしれない。
最後に山本氏が言っていた言葉が僕の心にかなり響いている。
「これを忘れたらいけないよ。みんなが一緒に居られること、温かい食事、温かい午後の日差し」
当たり前のことは当たり前でない。このことを忘れないように。