当たり前の人生を生きられる幸福と、心に刻まれるような言葉と思いは人に渡されると知った映画だった。
戦後まもなく満州で働いていた山本は、ソ連の奥地の収容所ラーゲリで長く過酷な強制労働の地で人々に希望を与えていく。
日本の戦争を描く映画は避けて来た節がある。特にこういう辛い映画は。満を持して鑑賞。やはり辛く苦しい。
今の日本の幸福は、こういう数多の辛く苦しいときを過ごしてくれた先人たちの懸命な命の先にあることを、深く。深く感謝することができた。
今も世界のどこかで苦しいときを過ごしている人はいて。その人たちにも家族があり希望がある。
それを見過ごして生きることの罪悪感よりも、それを見過ごして生きれることの幸せを噛み締めることができることがまず何よりも日本人にとっては必要なのではないかと思うことができた。
それぞれの役者も素晴らしく、もう言う事なし。特に松坂桃李の演技は泣けた。
Wikipediaを見るに山本の遺産はこの映画で描かれていないこと以上に人に希望をもたらしたのだとわかることができた。今作では映画用に絞られた人数が遺書を伝えていたが、史実はそれ以上の人数であり、その人の数だけ山本のおかげで行き抜けたに違いない。
人というのは1人では生きてはいけない。
でも、それに気づいたからといって、他人のために生きるわけでもない。
それでも。
生きるバトンを渡されるときに、それを握りしめられる人間でありたいと、強さを分けてもらえたと思う。
記憶は誰にも奪われることのないのだから。