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ラーゲリより愛を込めてのhasseのレビュー・感想・評価

ラーゲリより愛を込めて(2022年製作の映画)
3.6
戦後もシベリアの収容所(ラーゲリ)に抑留された日本兵らの絶望と希望を描いた戦争ドラマ。

カメラワークやライティングがチープなドラマに毛が生えた程度のクオリティでやや萎えたのと、山本の美談を中心に据えるあまり一面的な史観による描き方になっている点(例えば、山本は満州でご馳走を食べながら家族に希望を持つことの大切さを説くが、山本ら日本兵は占領者の立場でもあり、満州の人の「希望」を奪っている)が戦争映画として致命的な欠陥である。

しかし、山本の遺書を四人の仲間が(ロシア兵に没収されぬよう)切り分けて暗記し、ダモイ(帰還)後に山本宅に伺って口頭で伝えるクライマックスのシーンは非常にすばらしい。
山本の、妻、母親、子供らに宛てた言葉を代読することによって、その話者自身が、収容中に死んでしまった自身の妻や母親に思いを伝える疑似体験の機会を得るのである。(松坂桃李が、自身の母親を思い浮かべながら涙ながらに、山本の母親に遺書を諳じるシーンは涙腺に相当くる。演技もうまいのも相まって。)

病で死んだ山本が家族に向けて遺した「未来のための言葉」は、彼の家族だけでなく、周囲の仲間が大切な人に伝えられなかった言葉を疑似的に語る装置としてもはたらき、彼らが過去の絶望にけじめをつけ、未来へと再出発する契機となる。
ここは『グリーンブック』の仕掛けにも似てるんだよな。

個人的にはこのシーンがよすぎて、ラストの2022年のシーンや満州で山本が家族に語るシーンは蛇足(メッセージを丁寧に語りすぎている)に感じる。

野球のシーンはベタだが爽快でよい。

山本の妻役の北川景子が、年を経るにつれ気づかないくらいに徐々に老けメイクをしているが、ずっと可愛かったし、肌が艶っぽく綺麗だった。
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