まる

ラーゲリより愛を込めてのまるのネタバレレビュー・内容・結末

ラーゲリより愛を込めて(2022年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

号泣した。
あんな酷い状況でも希望を見つけ出して信じ抜くのは、能力というか胆力が凄まじいと思った。

終戦したからってパッキリ解散されるわけでもなく、グラデーションなんだなと思った。
混乱に乗じて見境なく捕らえて使い潰すとか最低だな。
後半は戦犯だからと強制労働させられてたけど、たとえ本物の戦犯だったとしてもあの扱いはもう二度と起きないでほしい。
捕虜の解放にも国交が必要なのか……

全体的に綺麗に描かれてたように思った。おそらく現実はもっと恐ろしい状態だっただろう。
あんな状況では、トラウマもえげつないと思う。
もしかしたら死ねた方が幸せなのではないかとも思える状態だった。
でも帰国した捕虜たちのPTSDとかが描かれてなかった。
愛をテーマにしてるということで、エグさは描かない方がまとまったのかな?

終戦後のもう一つの戦いという感じだった。
みんな大義を大切にしているようだった。
「何のために生きるのか。」
家族を守る、会うために仲間をも売る。
あの状況ではそれも責められないと思う。
全員が全員、背水の陣のような。
共産主義の演説が、ラーゲリ内でも開かれてたなんて。
アイザワさんへの仕返しも、両者の気持ちが理解できるし……
そりゃもちろん憎いだろうし仕返ししたいだろう。でもアイザワさんも命令されて動いてたわけやし、それ以上の地獄を知ってるからこそ、そうならないために動いてたんじゃないかとも思うし……
いずれにせよ、人を狂わせる。

安田さん、松坂さんらの絶望の表情や、桐谷さんの人間を捨てた表情など、本当に凄かった。圧倒的だった。
それまでの戦地やラーゲリでの経験を雄弁に物語り、捕虜としても振る舞いも心得ている表情、行動。
対照的に中島さんは真っ直ぐで素直な役が表情に表れてた。
彼のようなキャラクターもラーゲリでは癒しだったと思う。
少なくともラーゲリでは、人としての尊厳はなかった。

最初のラーゲリは本当に酷かったけど、次のラーゲリは比較的緩かった。
気温差によって人格も変わるのかな。

どんなときでも自然は美しく、まさに国破れて山河ありだった。

ワンちゃんがずっと無事で良かった。
ワンちゃんからしたら、同じ人間なのに何してるの?何が違うの?って思うんだろうな……

山本家、結構裕福だったのでは?
子供が大学行くとか言ってたし、服装も。
あと、妻子ともに健康体だったし。
仲間に渾身の遺書を届けてもらって、それも幸せだと思う。
亡くなった方は、肉体こそないけれど、だからこそ、そこかしこにいるんだよね。

最後の結婚式のシーン、ハイブリット形式でやってて、まさに今だったし、ハタオさんとの時代の近さに驚いた。

手紙を出すことも、家へ帰ることも、お腹いっぱい食べることも、水浴びも広く暖かい布団で寝ることもままならない状態から考えると、現在ははるかに安全で豊かになったと思う。
そこに感謝し、二度と繰り返さないために行動しないといけない。
それから、ロシアとウクライナでは今まさにあのようなことが起こっているかも知れないと思うと……
一刻も早く終戦しないといけない。
まる

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