CHEBUNBUN

燃えあがる女性記者たちのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

燃えあがる女性記者たち(2021年製作の映画)
4.2
【自由がないから私は結婚しません】
デジタルディバイドは社会全体で取り組まないといけない課題です。スマホやパソコンを持っていて、気軽に情報へアクセスできる人は得をする。一方で情報にアクセスできない人は損をし搾取されてしまう。故に、現代社会は難民や貧困層でもスマホを持っており貴重なライフラインとなっている。

本作が素晴らしいのは、搾取されるインドの女性たちにスマホを配布するところから始まる点である。女性たちはほとんどスマホを使ったことがない。スマホに対して「下手に操作したら壊れてしまうかもしれない。」と不安を抱いている者もいる。デジタルディバイドを解消するために必要なのは、「個人」が自由に使えるスマホ/PCを与えることにある。なぜならば、家族で共有のデバイスを持っていたとしても、家族内の力学で満足に使うことができない。万が一、デバイスを壊してしまった場合にDVを受ける可能性があるからだ。それにITスキルというのは、ITに触れている時間が必要となってくる。ITを身近に感じ、情報の洪水の中から勘所を見つけていくのが重要なのだ。

最初にスマホを配布し、使い方を教える。動画は横で撮ったほうが良い。それは何故か?人々は横長の映像に慣れているからと動画撮影の極意を教えていく。今まで紙媒体だった小さなジャーナリスト集団。web媒体に対する不安をこうした丁寧なレクチャーで解消していき、遂に取材へ赴く。

インドの搾取される人々の声を拾い上げていくのだが、これが難攻不落だ。マフィアに牛耳られている採石場。警察もグルになっており、声をあげれば家族に危険が及ぶ。そんな市民から搾取に対する怒りを汲み取っていく。時には、通せんぼし嫌がらせをする者も現れる。警察はニヤニヤしながら、「事案があったら対応するよ。俺らの仕事だからな。でもネガティブなことをあまり発しないでくれ。警察の評判が落ちると困るだろう。」ともっともらしい正論で女性ジャーナリストをコントロールしようとする。

それに負けることなく立ち向かう。スマホ片手に、編集も行い、愚直に人間を捉えていく。そのアグレッシブな行動をカメラは至近距離で追い続ける。

そんな状況で「結婚はしたいけれど、自由がないから結婚はしない。家族には感謝している。だから精一杯生きるんだ。」と吐露される。この言葉を聞いた時、私は膝から崩れ落ちました。
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