まぬままおま

裏路地の自由区のまぬままおまのレビュー・感想・評価

裏路地の自由区(2016年製作の映画)
3.0
映画でマイノリティを表象することの難しさ。
一見すると彼らが生きづらいのは、低賃金な清掃業に従事しているから、移民なのに改宗しないからなどの理由になりかねない。しかも窃盗やドラッグに手を染め、違法行為に手を染めているから彼らが悪いとも言えてしまう。
しかし就業する上での言語の問題や階級を再生産してしまう社会構造のあり方、宗教とアイデンティティの関係で、清掃業に従事せざるを得ない、スカーフを着用せざるを得ない、違法行為に手を染めざるを得ない背景が往々にあるはずである。
それをショートフィルムの短い尺で描くことの困難さ。実際、社会背景は後景に退き、そのことによって個人的な事象つまり4人の連帯と抵抗にのみ焦点が当てられている。
もちろん連帯や抵抗も顔のみえる個人から出発するものであり、それを描くことも大事である。だが個人の能力や自己責任に回収されないように、なぜ窃盗を働いてしまうか、またそれがどのようにして抵抗となり得るのか、そして警察のような合法的な暴力についても描く必要がある。そして映画から捨象されるなら私たちが想像するべきである。

蛇足
清掃業のオーナーが一番仕事の邪魔をしている皮肉。音楽聴きながら働いてもいいじゃん。ただそれやられると労働者に自由を与え、オーナーの支配から逃れるから禁止するのもよくわかるが。