低予算ながらレベルの高い合格点をオールウェイズ出してくれる、ブラムハウスの監禁モノスリラー。
シリアスであると同時に「こういうので良いんだよ」とライトなテンションで視聴できる佳作だった。
一般的に「監禁モノ」映画の見どころと言えば?
代表的なのは以下の要素かと思う。
①主人公が脱出のため創意工夫を凝らす描写
ex:『RUN』における、物理学の知識を使った少女の機転。
②悪役の異常性/精神的な病理の描写。
ex:『ミザリー』のキャシー・ベイツ
(ミザリー原作者のキングは『ブラックフォン』を著したジョー・ヒルの父親)
③悪役が悪役になるに至った経緯が明かされていくミステリー要素
ex:『スプリット』のジェームズ・マカヴォイ
…今作では情報過多になるのを嫌ってか、②と③はほとんど描かれない。
その代わり大々的にフィーチャーされるのが心霊/オカルト要素。
ここが監禁モノ作品としてはユニークなポイントだった。
鬼のマスクをつけた変態男に監禁された主人公フィニー少年が、殺された少年たちの幽霊のサポートを受け脱出を試みる描写の数々が楽しい映画だ。
フィニーは家庭では神経質なDV親父によって、学校では悪ガキ達にいじめられているかわいそうな少年。
(冒頭における父親の顔が監禁犯の顔とダブる演出は、説明的になりすぎないギリギリのライン)
日常的に閉塞的なムードの中で搾取されているフィニーが、物理的に閉鎖された地下室で頑張りを見せ、強さを手に入れる、清々しい青春/成長物語でもある。
特に終盤の、フィニーが親友の指導で自分で自分を守る術を身につける描写。闘志が湧きかつ切なさがにじむ好シーンだった。
『ゼログラビティ』で、死んだ仲間の幻影がサンドラ・ブロックを導くシーンと同じ切ない感動がある。
重すぎず軽すぎず、ちょうど良いバランスで楽しめる一品です。おすすめ。