悪魔の毒々クチビル

ブラック・フォンの悪魔の毒々クチビルのレビュー・感想・評価

ブラック・フォン(2022年製作の映画)
3.6
「好きになりかけたんだぞ」

連続誘拐犯に拐われた少年が、被害者の霊と電話で交信しながら脱出を試みるお話。


スティーブン・キングの息子、ジョー・ヒルの短編が原作のホラー映画です。プロットからしてやっぱ親子なのねぇ、と納得しちゃうと言いますか。
劇場公開時に話題になっていたので完全に観るの遅れた気がしなくもないよね。

全体的に結構好きな要素は揃っていましたし、普通に楽しめたのは間違いないです。
なのに何か思ったよりも薄いというか、あんま印象に残らなかったんですよね。
主人公のフィニーが子ども達の霊と謎の黒電話での会話劇も、幽霊側が話せる内容に限りがあったりとじわじわ脱出のヒントを得ていく展開とかは良かったけど、犯人側に仄めかされた残忍さや動機なんかは殆ど触れられていなくてちょっと残念。
まぁフィニーがこんな感じで他の子と違う状況下で監禁されていたのが原因だからしょうがない所もあったけど。

あと拐われた兄を第六感で捜す妹も設定は面白いけど、そこまで本筋に関わるって訳でも無かったのでそんなにワクワクしなかったです。
ただ父親の屑っぷりでこの兄妹の絆がより強固に表現出来ていましたし、父親も共感は出来ないけどあの凶行に走る理由が一応理解出来る存在になっていたのもまぁ良いんじゃないでしょうか。
亡くなった友人との電話越しの会話や、そこからのラストバトルも流れがベタで好きでした。

原作から改変された要素が多いらしいけど、それでも短編をまんま長編映画にしてしまった感じと言いますか、何か物足りないまま引き延ばされた作品に思えてしまいました。

それとイーサン・ホークが犯人役なのも話題でしたが、ずっとマスク着けているキャラとかも原作と違うっぽいのに大して掘り下げないのはちょいと気になりました。特に終盤でマスクに対する異常な執着なのか、素顔が嫌いなのか彼の内面に触れたちょっとした場面もあったのに。
因みにこのマスク、下半分のみのバージョンもありますが、その時の見た目がゴリケル・ジャクソンにそっくりでちょっと笑ってしまいました。「これ(マスク)は…クッキーだよ」ってね。
その後も無駄にゴリケルが頭をよぎってしまいその都度笑えて来てしまったのは申し訳なかった。