こーたろー

デューン 砂の惑星PART2のこーたろーのレビュー・感想・評価

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)
4.5
 あー!!めちゃくちゃ良かった!!ずっと公開されるの待ってた甲斐があった!!

 初めてスクリーンXで鑑賞。3画面に囲まれて見る映像はまさに惑星アラキス=デューンに自分がいるような錯覚に陥るほど、没入感と圧倒的な臨場感を感じることができた。ストーリーに関しても本当に良かった。
 また、劇伴音楽についても申し分ないほど素晴らしかった。
 ハンスジマーは結構主張が強い音楽が多いイメージではあるが、Part1含めた本作についても惑星デューンの荒涼としたどこか寂しげの漂う水平線の砂漠やデューンを取り巻く厳しい自然環境をも表しているような美しくも儚い音楽がとても良かった。

 前作のPart1では、主人公であるポールは自身が惑星アラキスの救世主となる予知夢を見るが、自分ではどのように行動を取ればいいかわからず、救世主になる覚悟も持てないといった未熟な精神面に焦点を当てて描かれていた。しかし、自身の存在意義が分からない故の不安や葛藤を描写しつつ、惑星アラキスが侵略され一族が滅びつつある状況から立ち上がるといったポールの精神的に大きな転換期を迎え最高潮の盛り上がりを見せたところでPart1は終わってしまったため、消化不良の気持ちでずっとPart2を心待ちにしていた。
 Part2での大きな軸としては、前作では覚悟や自信のなさから民を導く救世主になることを躊躇い続けていたポールが、正にPart1で父から言われていた通り民衆から求められた時に初めて王になるといった選択を取り、そこからアトレイデス家の復讐といった側面と砂漠の民フレメンに古くから伝説として伝わる惑星を救う救世主として惑星アラキス=デューンの王となる成長譚が描かれていた。

 ポールがフレメン達から信頼を得て、救世主となっていく過程が伝承めいているところも魅力だ。そのような構成から、本作は宗教が作られていく過程やその変革を垣間見ることができる稀有な作品となっている。本作の途中、フレメン達が信仰心の違いから北と南に分かれるところはカトリックとプロテスタントを彷彿とさせるし、救世主はあからさまにメシアを比喩しているというかそのものを表している。
 本作は作品を通してずっと"恐怖を恐れるな"といったテーマを観客に突きつけてくるが、それは一族が滅ぼされても復讐のために立ち上がり、フレメン達を味方につけながら惑星デューンの救世主となるポールの生き方に準えているのは明らかだ。

 本作を鑑賞し終わった後に自分が感じたことは、現実の私達の世界に存在しているキリスト教やイスラム教といった宗教も同じような構造によって作られているといった点だ。古代の人達が経験してきた、生死を彷徨うような不作による飢餓や終わりの見えない戦争、他民族による侵略。そのような明日生きていけるかどうかすら分からないといった状況で、必要だったのが宗教である。大昔から今まで、終わりのない恐怖に襲われた時、人はただ神に祈り続けることしかできなかったはずだ。
 宗教が確立してからは神頼みといった言葉の通り、人は恐怖に直面した時、神に頼ることが多い。でも本作のように宗教がまだ確立していなく、あくまで伝承として伝わっている時代では本当に信じられるのは自分だけであっただろう。
 この作品の伝説や伝承から宗教が成立していく過程を観て、どんな時代でも恐怖に打ち勝つ時は自身の揺るぎない信念が大事であり、必要不可欠なんだといった壮大なテーマを突きつけられた。本当にこの映画はずっと後世にも残り続けるテーマを内包している素晴らしい作品だった。