素晴らしき映像美を、美術館で絵画を鑑賞するように味わうタイプの映画。一般娯楽大作ではないので、注意!
一つの神話・英雄譚の始まりとしては最高クラスの映像体験。現状これ以上ないほどの圧巻の出来栄えなのだが……自分には合わなかった。
この作品が映像表現として優れている事はわかるし、あの星の砂漠は非常に美しかった。しかしエンタメとして面白いかというと、微妙だった。
まずとにかく長い。前編も割と長いのに後編の166分はキツい。さらに昔のSF特有の独自設定が飲み込み辛く、頭にクエスチョンマークが浮かびまくる。
「スパイス」って何? どんな効果効能があるの? 未来予知って何? 予言ってどんな内容? 未来なのにコンピュータやAIがなんでないの? というような原作小説では説明があるだろう内容が、映画ではかなりオミットされておりストーリーに興味が持ち辛い。
お話自体が非常に繊細な味付けのフレンチを食べているようで、一つの取っ掛かりを見失うと何を基盤に喋っているのか分からなくなってしまう。
とにかく原作を読んで、意味を理解していないとなんでそうなるのか分からないシーンが多いのが個人的には厳しかった。
例えば主人公が、サンドワームを乗りこなすシーンがある。このシーンの絵的な面白さは良かったのだが、それが予言的にどういう意味があるのか? というのが飲み込み辛い。
乗ったらそれで良いのだと思っていたが、どうもコントロールも出来るようで、他にも乗りこなせる人がいるらしく、乗り物のようにも扱えるらしい……この辺りはどういう理屈なのか分からなかった。こういう疑問が166分続くと、映画で初めて本作に触れる観客はかなり厳しいように思う。私はキツかった。