doji

デューン 砂の惑星PART2のdojiのネタバレレビュー・内容・結末

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

ポールとチャニのあいだに徐々に親密さが生まれていく様子をみているのはなんだか幸福で、ふたりが海原の光景を夢見ながらキスをするシーン、なんでこんなにエモーショナルなんだろうと思っていたら、そうか、そういうラストだからと逆算して泣けてきて、原作を読んでないからこその楽しみ方がちゃっかりできたと思う。

サンドワームに乗るシーンといい合戦シーンはアラキスの中には放り込まれたような臨場感。地鳴りのサウンドも見事で、IMAXじゃないとこの感覚にはなれない。峡谷を上から下に見下ろし、また下から上を見上げる。コロッセウムの圧倒的なスケール。観終わってしばらくまぶたの裏に浮かび続ける砂の赤は、映画というビジュアル表現がひとに与えるちからというのをまざまざと見せつけるような力強さにあふれていた。

ラストでレベッカ・ファーガソンとシャルロット・ランプリングが「どちら側、ということですらない」といったやりとりをするけれど、1000年弱のタイムスパンの中で血統間のパワーバランスを見極めながら、戦争を想定の範囲に入れつつも調和を図ろうとするその営みのスケールの前には、ストーリーや闘いの意味すらとるに足らないものだと示しているようで、民を率いるものとしてのポールの覚醒も、皇帝の座を巡る争いも、どこかドラマチックというよりも神話の筋書きをただ辿ろうとするだけのもの。だからチャニの嫉妬心が人間味があって惹きつけられるし、ラストで彼女が走り出してしまった姿をどこまでも応援したくなってしまう。

シリアスで荘厳であることを真顔でやりながらもハビエル・バルデム演じるキャラクターはけっこうコミカルでくすりとしたし、レア・サドゥの誘惑にまんまとはまっていくオースティン・バトラーの一連のシークエンスはかなり滑稽で、わりと観終わったあとは格式の高さよりもエンターテインメントとしての満足度の高さが優った。正直絵画のような構成の留め絵で美しさを際立たせていたのは前作の方だったかもしれない。方々では、まったく中身がないと言われていたけれども。

途中で気になったのは移動のシーンがわりとざっくりしていることで、あれだけもったいぶっていた北から南へも一瞬で切り替わったし、皇帝たちもどこかの星から瞬時に駆けつけて大気圏突入してきたので、なんというか話のスケールが大きいようで宇宙のスケールは小さく感じてしまうかもしれない。エンドロールのクレジットもわりとこの規模にしては短めな気がするし、ロケーションとセット、美術、衣装でオーセンティシティを担保して、CGとVFXを量ではなく質でみせているのかもしれないなと思った。なにはともあれ次作もぜったいにつくってほしい。
doji

doji