紛うことなき現代の神話。母の支配と先導によって青年が『英雄になる』という運命を歩み出す。力を持つこと、信仰の対象になること。つまりは『支配する者になること』の清濁併せ飲んだ巨大な意味とエネルギーが最高品質の映画体験によって感受でき、歴史・神話を目撃したかのような感覚になる。
新鮮な映像美、荘厳な風景、洗練されたデザイン、けたたましい地響きのような音響。全てが巨大過ぎる世界観を裏付ける。デカすぎて到底掌握しきれないスケールに圧倒される気持ち良さ。ビリビリ痺れる。
その大き過ぎる物語は全て『母』のような女性たちによって作られるというのが当シリーズの本旨になろうし、ヴィルヌーヴの作家性を色濃く反映した、魂の込められた映画になっている要因だとも感じる。
そして母・ジェシカの描いた道筋に従うことになる主人公・ポールの並々ならぬ覚悟が形成されていく様が、この上なく美しくも悍ましい。前作から続いた揺らいだ内面が、ある一本に集約されていくことの力強さと恐ろしさが見事に表現されていた。
それを見届けるチャニの全てを見詰める視線に本作の全てが詰まっている。
映像、物語、音響…どれをとっても最高峰。SF超大作の新機軸を打ち出している。
