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カッコーの巣の上でのyuumのネタバレレビュー・内容・結末

カッコーの巣の上で(1975年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

相変わらずテストステロン値が高そうなキレッキレのジャック・ニコルソン。The Wolf of Wall Street(2013)のディカプリオがシス男性達から「完全にリミットを外し過ぎ、でもそれが滅茶苦茶カッコいい」とカルト的な高い人気を誇るのを耳にするが、そのディカプリオが演技面で強く影響を受けているニコルソンが世代を超えたアイコンと化しているのは頷ける。同じ精神病棟を舞台にラディカルなはみ出し者を描いたGirl, Interrupted(1999)は本作の設定を据え置きにした男女逆転版にあたるが視点が二人称/三人称という差異もある。
病棟のルールを遵守する厳格な婦長が逆上したマクマーフィー(ニコルソン)に首を絞められ窒息しかけるシーン。夜に外部者を連れ込んではならないルールを破って女を連れ込み吃音の青年に童貞を捨てることを唆したニコルソンVS医療従事者としてだけでなく青年の母親の友人としての責任感からも青年の庇護的立場にあたる婦長。不祥事が母親にバレたくない一心で取り乱した青年が自殺未遂してしまう事件で明らかに悪いのはニコルソンなのに、良くも悪くも倫理観に欠けた彼が自分よりも身体的に弱い女に飛びかかり首を死ぬ程締めるシーンは文脈的且つ絵面的にかなりミソジニスティックで嫌悪感を覚えたが、その直後にロボトミー手術を受け抜け殻になった姿で登場し呆気なく物語が終わったので驚いた。
それにしても何故"チーフ"ことネイティブアメリカンの男はフェミニンに性的客体化されて描かれたのだろう?1人だけ乳首のクローズショットがあり、黒く濡れたようなミディアムロングヘアに少ししなを作ったポージングが妙に"女性的"で、マッチョな主人公マクマーフィーとは密かに2人だけで通じ合い「共にこの病院を抜け出そう」と誓い合うロマンティック展開。年齢でいえば吃音の青年の方がずっと若いはずだが、チーフは漆黒の髪の毛以外に肌や瞳もしっとりと潤んでいて誰よりも若々しくセクシーに見えた。アジア人をはじめ、白人以外の異性を性的客体化するのは特段珍しくもないが、同性且つ自分よりも背が高くて体格の良い人物を暗黙下にセクシャルに演出されていたのは本作が50年近く前の作品であることも踏まえて非常に興味深かった。
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