フクロウ

カッコーの巣の上でのフクロウのレビュー・感想・評価

カッコーの巣の上で(1975年製作の映画)
4.9
この映画は精神的には革命だった。一番好きなタイプの作品。

精神病棟の暴力性や異常者の線引きの難しさが巧妙に描かれている。患者は明らかに問題を抱えているが、彼らに対する抑圧の正当性を言葉で説明しようとすると矛盾が生じてしまう。最終的には暴力で解決されてしまう。
作中何度も話し合いの場が設けられるが、毎度婦長の一方的な決定で幕を閉じる。この何とも言えない立場の差がすごくモヤモヤさせるし、最後の開放感に繋がっている。

患者が理不尽に抑圧され、その状況を批判する外部がいないからこそ、患者が自ら反旗を翻す構図に感情移入させられる。

患者の自殺という一線を超えた事件と、それすらも高圧的に抑え込みロボトミー手術を行う病院。友の尊厳のために友を殺し、友が失敗した方法で脱出を成し遂げる最後は感動もの。これ以上の終わり方は考えられない。単に二人で抜け出して病院を出し抜くだけではこの深みは生まれ得ない。