KeN

カッコーの巣の上でのKeNのレビュー・感想・評価

カッコーの巣の上で(1975年製作の映画)
4.5
U-NEXTにて。再見。

これまたレビュー書き込みの為に久しぶりに再見。デ・ニーロに続き今度はジャック・ニコルソンの名演が際立つアメリカン・ニューシネマの傑作を。

1960年代初頭の精神病院を舞台に、当時の米国の社会体制の中で抗う男の姿を通して人の尊厳と社会の不条理さを描いたケン・キージー原作の名作『カッコーの巣の上で』をミロス・フォアマン監督が映画化した作品。原作では主人公がチーフであったが、映画ではジャック・ニコルソン扮するビリーが主人公として扱われている。

刑務所での強制労働を逃れる為に、精神疾患を装い刑務所での強制労働を逃れたマクマーフィーが、患者たちの人間性や尊厳までを統制しようとする病院の在り方に疑問と反発心を抱き脱走を決意させる物語は、一見すると『ショーシャンクの空に』のような“自由への羨望”を描いたようにも感じれるけど、当時の米国の社会背景を考えると そう単純なものではないように私には思える。時とともに泥沼化していくベトナム戦争の最中に、正義や秩序という名のもとで米国国民の考え方や行動を縛りつけようとする権力者側の管理統制や人種差別などの悪しき慣習に対して、反発心や反骨精神を抱くことの“健全性”の大切さを伝えてくれる作品であるように私には感じられる。それは決して過去の話ではなく、世界全体に再び“不穏な空気”が漂い始めている今 その“健全性”をしっかりと胸に刻み込まねばならない時のような気がする。

この作品を観て何かしら感じるものがあった方には、キューブリックの名作『時計じかけのオレンジ』と併せて観て欲しいな。
KeN

KeN