九月

ゴヤの名画と優しい泥棒の九月のレビュー・感想・評価

ゴヤの名画と優しい泥棒(2020年製作の映画)
4.0
実話に基づいた、という前置きがあり、その先入観を持って観ていたけれど、まさに映画!というような話の進み具合で、これが実際に起こった出来事だなんてびっくり。あらすじの通りに進んでいくだけかと思いきや意外性もあったりして、最後まで楽しめた。

BBCの受信料を払いたくないがために、チューナーを抜いて、映らない・見ないから払わない!と主張するおじいさん。この主張には共感できる部分もあるけれど、癖の強そうな人だな…というのが、主人公ケンプトンへの第一印象。
タクシー会社やパン工場で働くも、どこもそう長くは続かない。でも、その辞めさせられた理由こそが彼の人となりや信念を強く表していた。

年金暮らしの老人や、人種差別を受ける青年など、社会から追いやられそうな人たちをどうしても放っておけないケンプトン。何かできないかと立ち上がるが取り合ってもらえず、たどり着いたところが、捻くれているというか知恵が働くというか…とにかく普通じゃなくて呆気にとられたりもしたけど、こうやって行動に移せるところがすごい。

息子との良好な関係性や、冷め切ってしまっているように見えた夫婦仲の変化など、人間関係の見どころもあった。
なんと言っても映像がとても好みで、構図や撮り方を始めに、ファッションや街並み、家の中の雰囲気や部屋のデザイン・調度品…などなど、何気ないお洒落さが際立っていた。
九月

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