高齢者の受信料無料化の政治活動を行う、年金暮らしの主人公が、ロンドンナショナルギャラリーからゴヤの名画を盗み出し、世間に訴えるという、実話をもとにした作品。
話好きの頑固爺さんな主人公ケンプトンのキャラクターといい、マナーに厳しい妻ドロシーといい、事件の結末とその理由といい、とてもイギリスらしい作品。誰がどう見ても犯罪なのに、慈善のためという面白爺さんのために、理屈をこねくり回して、みんなが幸せになれる結末に持っていくのが、素敵な物語でした。
犯罪がどうこうではなく、家族の愛情の物語ですが、後半の裁判シーンは、ケンプトンの饒舌な語り口がとても楽しいです。バケツ屋がどうのこうのとか、さすが二枚舌の国。
また、1960年代ロンドンということもあり、背景で流れるテレビや舞台上映が時代を反映しているのも面白いです。
イギリスらしい偏狭さもありながら、優しいキャラクターたちによって語られる素敵な作品でした。