gintaru

ゴヤの名画と優しい泥棒のgintaruのネタバレレビュー・内容・結末

ゴヤの名画と優しい泥棒(2020年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

イギリスの映画らしいユーモアとペーソスに満ちた人間ドラマ。安定した画作り、役者もみな達者。
実話らしいが、登場人物は皆ユニークで魅力的なキャラクターに作り上げられている。
主役級は別として長男の恋人のパメラはホント図々しくて憎たらしい(笑)

60歳のケンプトン(もっと老いて見える。あの頃は皆そうだったのかな?)は国営放送BBCの有料制に異議を唱えているが結局認められず短期間だが刑務所に入れられてしまうというところから話は始まる。
映画とは関係ないがNHKの問題も同じようなものだから何とかしてほしいと思ってしまった。この映画、NHKでは放送しづらいだろうね。
ケンプトンがパン工場で働いていて人種差別的な上司(パキ野郎とののしっていたからパキスタン人に対してなのだろう)に正義感から反発するのも時代だなと思った。
その後盗んできたゴヤの絵を部屋のタンスの中に隠すが、家を出ていた長男が恋人のパメラと押しかけてきて、その部屋に住み着いて、その後パメラがその絵を発見し、ケンプトンにゆすりをかけるという展開になり、結局ケンプトンは自首し、裁判にかけられる。
裁判でのシーンはなかなか演劇的で、「11人の怒れる男」などかつての名画を思わせるような演出となっていて面白い。
最後のどんでん返しは、見直すと確かに主人公のケンプトン・バントンがやってたわけではなかったんだなという構成になっているし、事件を知っているイギリスの人はわかるのだろうが、最初は見ていて全然わからなかった。
話の本筋とは別に自転車事故で亡くした娘にまつわるシーンが各所にちりばめられているのがこの映画をさらに味わい深くしている。
ラストで夫妻が映画館で007ドクター・ノオを見ていてドクター・ノオの秘密基地にこの絵があるのをジェームズ・ボンドが見つけるというシーンがあるが、これはへえ、そうだったんだという新しい驚きがあった。最初見ていてあれ、これ007だよなと思って後で調べたら、ちょうどこの事件が発生して未解決の状態だったときに007が制作されたという、そういう時代背景があったらしい。

ロンドン・ナショナル・ギャラリーは行ったことあるけれど、この絵は見なかったと思う。知ってれば探したのに。

原題はTHE DUKEとシンプル。ゴヤの絵がウェリントン伯爵であることからきているのだろうが、主人公のふるまいの気高さにも掛けているのかな。邦題はやや説明的すぎるかなと思ったが見終わるとまあ確かにそうだとも思えた。
gintaru

gintaru