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もっと超越した所へ。のriikoのネタバレレビュー・内容・結末

もっと超越した所へ。(2022年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

「実家の犬は…」なんて台詞じみた台詞から始まった冒頭、あのエンディングを観てから改めて思い出すとあの台詞はファンタジーの合図だったのかも。

米のインサートが度々差し込まれる。
米は買わなきゃいけないし、買ったら研ぐし、研いだら炊く、炊き上がったら握るし、握ったら食べる。
そこに心は要らなくて生きるための欲他ならない、DOの行動。
一方で恋愛は他人あっての欲求だから心が要るので、思考がBEになる。他人を介することだから自分だけのDOでは満たされない。

でもこの作品の男女8人は恋愛の欲にどこまでもTO DO、自分のこうすべきがずっと先行してるから恋愛への乾きの描写が続く。
女4人の見せかけの譲歩でハッピーエンドの形でクロージングしたけど、あれのどこが幸せなんだろうか。

最近Twitterとかで「相手に過度な期待をしないことが幸せの秘訣」みたいな文章がバズっているのをよく見かけるけど、あの考え方が大嫌い。
「ワタシからの期待は程々なんだからアナタも程々にしてよね」
なんて、それこそ浅慮な期待が伺い知れてしまうような考え方に感じる。

愛情に必要なことって自分が相手を好きでいつづける工夫じゃなくて相手に好かれ続ける努力だと思ってる。
自分がどうしたいのDOよりも相手のためを思ったBEの発想になれば「パートナーへの期待なんて程々に」なんて相手を軽んじる思考にならないと思う。

最後のタイトルバックの超越の2文字をみてマズローの欲求の階段を思い出した。
欠乏欲求とされる生理的欲求から承認欲求までの描写は延々とあったのに、頂点である自己実現欲求の描写がファンタジーになってお祭りのドンチャン騒ぎになっていたから"超越"した瞬間はまったく感じられなかった。
結局どこまでもDOじゃん。

ただ、演者が全員めっちゃくちゃ良かった。
あっちゃんの台所パンチラインは効いたし、レイジ君の浅い愛情表現がたまんなかった。グリルズお揃いでつける彼氏とか欲しい人生だった。
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