geminidoors

ボイリング・ポイント/沸騰のgeminidoorsのレビュー・感想・評価

4.2
天晴れ!お見事です。
料理人を題材にした映画や小説は結構自分にとっては当たりが多いみたいだが、コリャ又たまげたアプローチでした。
以前"スナッチ"で知ってから、かなり好きな曲者俳優グレアム経由で観たんだけど、グイっと前のめりのまま、最後まで息を抜けない感じでしたナ。

自分も昔々、"火、火、金、金、火金金っ♪"と求人誌某AがCM流していたバブル全盛期、バイトだけど厨房に数年働いた経験を思い出す。
勤めていた店の格は映画とは大きく異なれど、厨房のコノ緊張感は懐かしいもんだ。
繁忙期(日、或いは時間)や、それよりも予想外の客や、いやらしいクレームや、つまりは急な事態…
その際のスタッフ一人一人や、オーナーやチーフの対応は、コレまた異なった。
若く青二才だった私は、時に巻き込まれたり時に傍観したり…あの時代は表向き粋がってはいても内心は初体験ばかりの波に、只委ねるしかなかったのだった。

と言うより…問題の勃発は、勿論レストランの厨房だけではない話でもあるだろう。
其々が違う人生を歩み、違う生活を抱え、狭い1カ所の空間で、同じ目的に向かい、協力して施行(作業)に向かう時にーだ。
肉体的にも精神的にも、その日その時の各人の許容範囲はまるで違う。
人数が少なかったり空間が狭かったり、色んな部分がタイトな程に顕著に現れる。
その"実は既に用意されていたストレス"みたいなモノは、ダイレクトに勃発しやすいだろう。いわゆる一触即発って奴だよね。

本作のノンストップなカメラは、まるでドキュメンタリーを覗き見させられているかの臨場感を味わえた。
だが、実はこちら側が眼で観ていたり耳で聴こえる台詞以外の、彼ら彼女ら一人一人の日常というか出処を、凄いスピードで想像してしまう仕掛けであった。
人気のレストランの厨房とホール或いは裏側を通して、その静動の振幅や慌ただしさを観ながらにして参加し、或る沸点(それもランプのヒューズが飛んで灯りが消える様な)へのコースターに乗っていた訳だ。

名シェフの仕上げた皿上の料理を、もっと映して欲しかったとの声もあるけれど。
併し、料理番組の料理が美味しそうに見えなかったり、料理雑誌の料理が美味しそうに見えるのでも判るけど、結構実際に食べて美味しいと感じる物(料理)と美味しそうに見える物(料理)は異なる物だったりする場合もあるよネ。
美味しそうに映画の中で映すのって、かなり異なる技術だと思われ。
でも、きっと本作では料理をアップで美味しそうに撮る必要はなかったんだなぁと想像したり、ネ。

何故なら…どうして〜
本作はあくまでも、レストランを材料にしたまでの"煮込み(茹で)料理"であるから。

なんてネ。

あまりオチに成ってナイかね(苦笑)
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