バートロー

アンビュランスのバートローのレビュー・感想・評価

アンビュランス(2022年製作の映画)
5.0
評判の通りの面白さ。日本では久々のマイケルベイ監督作品の劇場公開でオカエリナサイ。まず人間ドラマが気合が入っていて、犯罪に手を染める兄弟のなんとも言えない関係性が最後まで物語を引っ張る。犯人、人質、負傷者が同乗する逃走中の救急車に生まれる密室のスリル。そして、身内の命のみに重きを置く警察、カルテル、兄と対になる復員兵の弟、女性救命士の善良さが光る。

ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世演じる悩める復員兵の弟とは違い、サイコ気味で”キレる”兄を演じたジェイク・ジレンホールはベイ作品で言うところのショーン・コネリーやエド・ハリス的な名優起用ポジで、複雑な背景のある役柄をジェイク・ジレンホールにしか出来ないひり付くようなキレた演技を披露してくれる。

導入にマイケルベイ流のヒート銃撃戦オマージュと無残なスーサイドスクワッド展開(アイツらなんだったんだ)で観客の心をばっちり掴むのも束の間、割と早くから救急車のチェイスに移ってしまい、これずっとカーチェイスで時間持つかな?という考えはベイヘムの前では杞憂。前述の濃厚なドラマ、爆走する異様に頑丈な救急車とスリリングな密室、破壊される警察車両、ロックダウン中のLAを使ったダイナミックな撮影と今回の飛び道具のスーパードローン多様といつも通り息付く暇がない。ドローンに関しては使い過ぎなくらいだけど、商業映画だろうと攻めるベイさんにやりすぎとかそういう概念はない。客の三半規管を信用してくれている。お馴染みグルグルカメラとの相性も良く、マイケルベイの新たなアイコンとなると思われる。

ザ・ロックやバッドボーイを愛し、ペイン&ゲイン、13時間、6アンダーグラウンドという名作の劇場未公開の憂き目を体験したファンの鬱憤を晴らす快作で、初めてのマイケル・ベイとしても充分オススメ出来るクライムサスペンス。ギャグシーンで出てきた大きくて可愛いワンちゃんは監督の愛犬で本当にラブリーなところもポイント高い。