るるびっち

アンビュランスのるるびっちのレビュー・感想・評価

アンビュランス(2022年製作の映画)
3.6
監督はADHDなのかと疑いたくなる程、画面に落ち着きがない。
ドローン・チャンピオン操作の撮影では、画面がグルングルンする。
バットモービルより頑丈な救急車は、どれだけぶちかましても壊れることはない。戦車並みだ。
患者も頑健で、脾臓が破裂しても死なない。
不死身なら、救急車いらないじゃないか。
アドレナリン出しまくり、揺れまくりの映像で悪酔いする。
凄いアクションだが緩急がなく、ずっとジェットコースターなので、後半ちょっと飽きてしまう。
濃い味のおかずばかりだと、飽きが来るのと同じ。

ところで70年代の邦画だと、主人公が暴走のあげく最後は収集がつかなくなって死ぬという展開が多い。
それは忠臣蔵精神・特攻精神に通じる日本人の悪癖だと思う。
死を賭けた行動や玉砕を一つの美学としている。
社会や体制に反乱し、暴走した主人公が最後は討死するという形で世間に不公平や不正を訴える。
玉砕や死に様に美学を見るのは日本人の精神だが、弊害があると感じる。
逆の例だと、ロッテの佐々木投手が、プロ野球史上16人目の完全試合を達成した。
彼は2019年、甲子園選抜の決勝大会で肩の故障を防ぐため、無理に出場せずチームは敗退した。
批判もあったが、母校の監督の英断が正しかったことを、この度実証しただろう。当時無理をして肩を壊していれば、今回の28年ぶりの完全試合という大記録は達成できなかったのだ。

野球好きのオヤジたちにしたら、肩を壊してでもチームの為に投げて散った不遇のエースの美談の方が酒が美味いだろう。
オヤジたちの酒の肴になる必要はない。
肩も将来も、無責任な野次馬に奉仕する必要はないのだ。

本作はアメリカ映画なので、勿論そんな特攻的美談はない。
死んだり散ったりするから美しいなんて弊害だし、それを安全な観客席に居て若者に押し付けるジジイは老害だ。
どんな命でも救う価値がある。死ぬことより生きること。
その清々しさに一票を入れたい。
これが邦画だったら、玉砕しちゃうんだろうな~。
救急車ではなく、霊柩車の映画になりがち。
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