MasaichiYaguchi

終点は海のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

終点は海(2021年製作の映画)
3.7
短編作品「Kay」で数々の国際映画賞を受賞した鯨岡弘識監督が同作の鏡像的作品として制作した短編作品は「喪失」をテーマに、アパートで一人暮らしする明子のもとに訪れた息子・レンとの小旅行を軸に、母子の間の溝とその修復を描く。
5年前に喧嘩別れし、突然消息を絶った息子・レンが母・明子のもとに突然現れる。
母子の空白の年月で明子の生活は彩りを失い、病気と貧しさ、そして孤独を抱えていた。
2人の間の深い淵を埋めようと、レンは明子を「終点」となる海へ小旅行に連れ出す。
寒風吹きすさぶ季節はずれの海辺の焚火を挟んで母子は久し振りの会話をするのだが、その会話から醸し出される2人の心象風景から見えるものは儚く切ない。
明子を洞口依子さんが演じていて、「ミセス・ノイズィ」以来、久し振りにスクリーンで観たが、変わらない存在感で、ほぼ清水尚弥さんとの二人芝居を支えている。
息子・レンとの邂逅と離別の先に、彼女が見出だすものが心に余韻を残します。