みむさん

ウーマン・トーキング 私たちの選択のみむさんのレビュー・感想・評価

3.5
超保守的なメノナイトのコミュニティで起きた連続レイプ事件への対応について架空の人物たちが話し合う同名の小説の映画化だそうだ。

想像以上に陰惨な話だし議論の紛糾っぷりや男性が現れたりする部分は異様に緊張するが、ほとんど会話劇のみで描かれるので動きはあまりない。台詞多くて別の意味で疲れた。聞き取りor字幕を追うのが大変、万全のコンディションでどうぞ。

何もなかったように過ごすか、この家に留まって闘うか、離れるべきか。
議論の最終目的はそれなんだろうけど、その過程でいろんな議論が飛び交う。
信仰と赦しの限界、悪の性質と詳細、さらには感情が爆発したり取り乱したり。トラウマも蘇る。

女性たちのなかで数少ない味方の男性オーガストをベン・ウィショーが演じていた。
オーガストは植民地の教師で議事録的なメモを取る役割でそこにいて、たまに議論に巻き込まれるが少し距離あり。
その彼がひそかにルナに恋してるっていう設定が、緊迫した内容の議論のなかで清涼剤的だった。

男性に酷い目にあった女性たちなので男性への怒りは強いが、オーガストのことは信頼していてこの残酷な戦いを終えるべく少年たちの教育を託していくんだな。

あの場所に留まっても立ち去っても問題は解決するわけではないと思う。
社会が変わらない限り彼女たちの緊張は解けないだろうし、残酷な出来事があるかもしれないと警戒するあまり、子供たちに男性嫌悪が植え付けられたり、本来の性教育を受けさせることができないかもしれない。
だからこそオーガストが託された「教育」の使命が重要になっていくと思う。

そう考えると、女性たちが激論の末に決断し抑圧や暴力に負けずに歩み出す物語にもかかわらず、意外にもベン・ウィショーがめちゃくちゃ重要な役じゃないか……と思ったのでした。