Asino

ウーマン・トーキング 私たちの選択のAsinoのレビュー・感想・評価

4.5
fansvoicejpさんの試写で。
閉鎖的な共同体で、日常的な暴力にさらされて生きてきた女性たちが、許す・闘う・去る、のうちどれを選択するか話し合う104分。
舞台劇のようでありながらとても映画的で、暴力的なシーンは1つもないのに怒りで泣きたくなる。すごい映画。

宗教的なコミュニティでの話なので、選択はときに信仰そのものの話にもなる。
それぞれの選択は真逆のようでも、経験は共通していることが徐々に見えてきて、その恐ろしさに震えることになる。最初平行線に見えた話し合いの結果、彼女たちの選択はやがて1つになる。
脚色賞受賞作品ですよね。納得。

暴力的なシーンがないというのは直接写さないだけで、どれだけの暴力と抑圧がそこにあるのか、は生々しく伝わる作り。
フランシス・マクドーマンドの役も出演時間は短く「選択」も意外なものに思えるけど、壮絶な過去があるからこそなんだろうとありありと想像させる、とこがさすがの存在感だった。

原作の元になった実際の事件についてのドキュメンタリー。ここで見れる。
https://www.vice.com/ja/article/59kgex/ghost-rapes-of-bolivia

「男たちがいない二日間」の話で、画面に映る成人男性はオーガストのみ、つまりベン・ウィショーその人。
文盲の女性たちの変わりに記録を残す教師なのだが、当然ながらとても大事な役だった。彼の静かな存在があったからこそ、彼女たちはあの選択が出来たのだと思う。

外の世界に出て教育を受けたあと、自分の家族を追放した(きっと自身も怖い目経験をしたに違いない)共同体に教師として戻るというのは、恐ろしい胆力がないと出来ないことのはず。
穏やかに女性たちの話し合いを見守り、最後に大切で象徴的なものを手渡す。ある意味物語の肝になるキャラクターだった。

全体的に、彼女たちは教育も受けられてない(学校はあるけど男子のみ!)のにあまりにも洗練された会話劇すぎないか?という気はしたんだが、これは「あくまでもあの共同体の場を借りた現代の寓話なので!」、という強い意思のもとに「敢えて」なのかもしれないな、と思えてきた。

それにしてもうまい人しか出てないからなんかずっと息が詰まるのだが、ルーニー・マーラの柔らかい笑みがすごい血を流しているように見えて。
あとはねえもうウィショーさんですよやっぱり。ああウィショーさん。(好き)
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