このレビューはネタバレを含みます
予告編を見ていたのでこの映画の舞台が2010年だとは知っていた筈なのに途中モンキーズの「デイドリーム・ビリーバー」が流れてくるまでずっと昔の話だと思って観ていた。子供の傷にバンドエイドを貼るところで「おや?」とは思ったのだけど。
アーミッシュのように古の生活様式を守っているキリスト教コミュニティ(言及は無いがメノナイトという集団らしい)で女性が寝ている間にレイプを受ける事件が連続して起こり、やがて現場を押さえられ逮捕者が出るが実は村の男性達が共謀して犯行を繰り返していたことが発覚する。
男達が逮捕者の保釈金を払いに村を離れた2日間、女達が集まってこの先どう行動するかを話し合う。
選択肢は「子供たちを連れて村から逃げる」「村に残って闘う」「男たちを赦して同じ生活を続ける」だったが投票の結果は「逃げる」と「闘う」が同数で「赦す」は極少数。
女達を代表して三家族がどちらに決めるかディスカッションしていくのが映画の骨子。
話し合いの中で彼女らが単に現代文明から離れているだけでなく男性に何かを(例えば塩の瓶を取ってくれと)頼む文化が無い事、女性だけが教育を受けられず全員が文盲である事、争いを起こした者は地獄に堕ちると固く信じている事などが分かってくる。直接的には描かれないが日々男性から痛ましい暴力を受けている事も。
人権侵害も甚だしいが古来からずっと続いているのでどちらの側も疑問に感じてこなかったらしい。女達が行動を起こす動機は自らの安全では無く子供たち(特に娘)を守るためという事の方が大きいようだ。
この会合の書記を務める過去に家族ごと追い出され村の外で育ち、教師として戻ってきたオーガストという青年が唯一男性の登場人物なのだが、女たちが彼に向けた「連れていく子供たちに13〜15歳(low teen、日本だと中学生だ)の少年を含むべきか?」という問いが私には興味深かった。
彼の答えは「否」だという。この年代の男子は既に男社会に属して行動する事を学んでしまっているため連れて行くのは危険なのだという。