藍紺

ウーマン・トーキング 私たちの選択の藍紺のレビュー・感想・評価

4.1
閉ざされた宗教コミュニティの中で起きた集団性的暴行事件を基にした作品。
性被害を受けた女性たちが自分たちの未来のために話し合う。「赦す」か、「闘う」か、「去る」か。

女性たちは当然それぞれに意見を持っていて議論は紛糾する。しかし老若に関わらず全員の意見に耳を傾け、時には手を取り、肩を抱き、お互いを労わりあいながら、みんなで問題解決に導こうとする。相手の反論も一旦受け入れた上で持論を述べる姿に感銘を受けた。彼女たちは教育を受けられないので文字を書くことも読むこともできない。音楽や運動を享受することも搾取されている。だが短絡的に暴力を行使することではなく極めて民主的な話し合いによって問題と向き合う。対話の可能性を信じていいと言われている気持ちになる。

『“赦し”と“許可”は混同されやすい』という言葉にハッとさせられた。
宗教が人格形成に大きく作用しているため、赦すことが自分たちにとっても有益であると教えられているのだ。死後、天国に行けることが彼女たちには重要であるという事実が腹立たしい。男たちにとって宗教の解釈が都合よく出来ていることに怒りが沸く。

『天国だけでなく、地上でも存在理由が必要よ』というセリフには、よくぞ言った!その通りだよ!!今を生きてくれー!!!と思わず心の中でエールを送っていた。

ルーニー・マーラとクレア・フォイという大好きなリスベット・サランデルを演じた二人の女優が揃い踏み、しかもこれまた大好きジェシー・バックリーの共演ということで辛い映画ではあるけど本当に観てよかった作品。

話し合いの書記役を演じたベン・ウィショーの立ち位置も見事。一人でいる時、ある有名な曲を口ずさむシーンがあり、そこがまた皮肉というか彼の過ごしてきた過去を思わずにはいられない。勿論彼は女性たちの味方なのだが、彼自身は十分な教育を受け音楽を享受した側の人間なのだ。その曲を選ぶかって歌詞の曲で、サラ・ポーリー監督の凄味を感じた。それがエンドロールで流れてくるのも辛辣。

夢見る権利に性差はない。ましてや教育を受ける権利に宗教は持ち込んでほしくないな。
藍紺

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