ゆかちん

ウーマン・トーキング 私たちの選択のゆかちんのレビュー・感想・評価

2.9
ベン・ウィショーの演技を観たくて映画館へ。

2005年から2009年にかけて南米ボリビアで実際にあった事件をもとにした小説を映画化した作品。
出てくる村とか全て架空の話ではあるけど、同様の事件があったというのに驚き。しかも、2000年代になんて。
宗教って、コミュニティって、人を幸せにするものとは限らないんだなぁ。

女優陣の静かな中に怒りと哀しみが込められた演技が良かったのは勿論、難しい立場にありながら思慮深く、切なさをこれでもかってくらい表現したベン・ウィショーがとても良かった。



2010年の架空の村。独自の生活を営むキリスト教一派の人々が暮らす村で、女性たちに対する性的暴行が多発する。これまで女性たちは、そのことを悪魔の仕業や作り話だと男性たちから否定され、真剣に取り合ってもらえずにいたが、やがてそれが明らかな犯罪であることを知る。
男性たちが街へ出かけ不在となる2日間、彼女たちは自らの未来を懸けた話し合いを行うーーー。



自給自足感ある村の雰囲気とか、女性は教育を受けられず読み書きが出来ないとか、100年以上前の話なんかなて思ってたら、突然のデイドリームビリーバー。時代設定が2010年と判明して、思わずのけぞった。

マジかよ〜。
世界から離れすぎた宗教やコミュニティて怖いな〜。
思考や意見を許されないて、私には無理だ。
むかついてたまらん。

その上に、牛用の麻酔で性暴力て、マジかよ〜。牛用のって、女性を人間扱いしてないんだね。。所有物なのか。。それも無理だ。
むかついてたまらん。

で、愛し合って望んで子供を産むのではなく、誰の子かわからん子を産むという。
ルーニー・マーラ演じるオーナはそれでもお腹の子を愛してるていうけど、うーん。子どもに罪はないけどさぁ…。
だから、その子も含めて僕が守ると言うベン・ウィショー演じるオーガストの大きな愛に泣きそうになった。

なんか「洗脳」されてるみたい。


とまあ、衝撃的な事件を題材にしてるけど、この件について、学が(与えられ)ない女性たちが取った行動が、まずは投票制。
そして、拮抗したときは、話し合いで答えを導こうとする。
同じ意見を持たない人々が、暴力によらず、権力を振りかざさず、汚い駆け引きも行わず、正々堂々と話し合いにより合意形成を図って前に進む方法を切り開くというのは、めちゃくちゃ民主主義だなと。
民主主義の鏡。

ここがまず伝えたかったのだろうか。



でも、本来であったら加害者の男が逮捕されて刑務所に入ればいい話やけど、こういう社会の正義は機能していない村。加えて、被害者をケアするサポートも無い。
「赦す」は宗教的に最大の徳であるけれど、赦したらまた繰り返すだけ。赦しを許可と取られかねない。
「出ていく」にしても、どうやって女性だけでやりくりしていけるのか、置いていく男達子ども達はどうなるのか、追いかけてこられたらどうするのか。
「闘う」にしても、勝てる可能性はあるのか、宗教的に赦されるのか、犠牲者はどうするのか。

どう転んでも苦しいよな〜。。
こういう苦しい閉塞感みたいなのがあった。
そもそもの「傷」がまた酷いし。。。

でも、違う意見の者同士でも、傷ついているときは寄り添い、慰め、笑い合い、協調していく。
ただ苦しいだけでなく、こういうフッと軽やかさや優しさが溢れるシーンを挟むことで、見ててもしんどくなりすぎないように仕上げていた。
宗教て怖いなて思ったけど、彼女たちが前を向くために歌うのとか、そういう支えは宗教なんだよな。うむ。

違う意見だったり、対立したとしても、相手の痛みを理解し、寄り添うというのは、人として必要なことだよな〜。
意見を曲げることはないかもしれないけど、何か新しい見地を生むためには、対立するだけでは進まないもんね。

女性をこういうふうに表すのはサラ・ポーリー監督らしいてところなのだろうか。
死ぬまでにしたい10のことの主人公やってた人だよね。


結論は、「出ていく」を選ぶ女性たち。
出ていくは逃げるでは無いというのもなるほど。
放棄ではなく、抗議だもんな。

外の世界に出たらビックリしそうやけど。
てか、新しい場所見つかるのかなとか、男たちが追いかけてきて殺されないかなとか、大丈夫なのかなってところはあるけど。
でも、未来に繋がる希望は感じられた。
まあ、ナレーションからしてうまくいったということなのか?
まあ、そこは映画やからね笑。


主人公は女性たちではあるけど、書記として参加した唯一の男性オーガストも裏主人公というか、大事な役どころだった。

性別的には加害者側だけど、このコミュニティの男性のおかしさに気づいている存在。
立場難しいよな〜。
でも、村を追放されて外の世界を知り、大学まで行ったのに何で戻ってきたのか。
オーナを想ってたのか、それか、彼も「洗脳」されていたからなのか。


男性のおかしさに気づいている彼のやるせない気持ちと、子供たちは教育すれば加害者にはならないということに気づいている使命感。
確かに、女性はそう扱っていいて洗脳されて育ったら、そうなってしまうよな。
彼は洗脳を解くことができるのだろうか。

でも、その使命のためにオーナと別れることになるのが切ない。。。

淡々と観ていたけど、最後、オーガストがオーナに向かって「ずっと愛してる」て泣きそうになりながら言うたときに、あまりの切なさに泣きそうになった。
ベン・ウィショー、切なさを表現させたらピカイチだなぁ。


ルーニー・マーラって、結構、女性が問題を抱えてるとか主張する作品で重要な役やってるイメージ。
尖ってるともいえるのか。
綺麗からヒロイン役とかハッピーな役どころではなく、ちゃんと何らかの強めの主張のある役というか。

クレア・フォイやジェシー・バックリーも良かった。

フランシス・マクドーマンド、もっと出るかと思いきや少しだけ。
でも、重要な役だったな。村に残るを選択するのだから。
みんな最初から出ていくではなく、いろんな意見があったというのを証明してる役。
娘と孫を送り出す彼女の気持ちを思うと、なかなか深みがありましたな。。

あと、心が男性で、性被害にあってから男性として生きている女の子がいたり、障がいのある子もいたり。
色々と多様なところがあった。
考えたらもっと考察できそうだけど、この辺で。

赤ちゃんに向かって、「あなたは知らない世界」みたいなこと言ってるの、女性の参政権の映画とか思い出した。
こうやって変化を起こしたから、今の自由があったりするもんね。。
ゆかちん

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