ぶみ

ウーマン・トーキング 私たちの選択のぶみのレビュー・感想・評価

3.5
赦すか、闘うか、それとも去るか。

ミリアム・トウズが上梓した『Women Talking』を、サラ・ポーリー監督、脚本、ルーニー・マーラ主演により映像化したドラマ。
自給自足で生活するキリスト教一派のコミュニティで、女性が夜な夜な男たちにレイプされていたことが発覚したため、今後について話し合う女性たちの姿を描く。
原作は未読。
主人公となるコミュニティの女性たちをマーラ、クレア・フォイ、ジェシー・バックリー、ジュディス・アイヴィ、フランシス・マクドーマンド等が演じているほか、コミュニティを破門され議論の書記となる男性としてベン・ウィショーが登場。
物語は、女性が目を覚ますと下半身が血で汚れているという、衝撃的なシーンでスタート、それはずっと悪魔の仕業とされていたところ、実はコミュニティに住む男たちが女性を薬で眠らせ、性的暴力を加えていたことが発覚したことから、今後についてどうすべきかを議論する女性たちが描かれるのだが、性暴力のシーンが直接的に描かれるわけではなく、また、誰がやったのかを追い詰めるサスペンスでもなく、ひたすら薄暗い倉庫での会話劇が続くため、正直絵面はかなり地味。
そこで、男たちと闘うか、引き続き暮らしを続けるか、はたまたコミュニティを去るかの三案が出され、何を選択するかの議論がなされるのだが、もちろん、それぞれ意見が違うし、話は逸れていくし、体調を崩す者が出るしと、一筋縄にいかないのは明らか。
そんな中、一歩進んで二歩下がるではないが、進行と退行を繰り返しながら、着実に皆が落としどころと思える結論に向かって歩んでいく様は、まさに合意形成のプロセスそのものであり、たまたま狭いコミュニティにおける性暴力という特異な状況を舞台としているが、これは、どんな社会にでも当てはまることではなかろうか。
そして、何より、実話ベースの作品であり、その自給自足で暮らす生活ぶりから、何十年も前の話かと想定していたら、途中、2010年の国勢調査を実施する旨をスピーカーから流すクルマが登場したことから、つい最近の話であることがわかり、驚いた次第。
加えて、女性の一人が、どこかで見たような顔だなと思っていたところ、主要人物の一人・マリチェを演じていたのが、アレックス・ガーランド監督『MEN 同じ顔の男たち』の主人公ハーパーを怪演したバックリーだったのも見どころの一つ。
犯人捜しのミステリや、ジェラルド・ブッシュ、クリストファー・レンツ監督『アンテベラム』のような閉ざされた世界におけるサスペンスを想像すると期待外れに終わってしまうが、身体や心に傷を負った女性たちが、自らの未来について真剣に語り、どうすべきかを導き出す会話劇に魅了され、唯一登場する男性であるウィショー演じる教師の肩身の狭さが身につまされるとともに、先日スクリーンで公開されたばかりなのに、早くもサブスク配信してきたAmazonに頭が下がる一作。

思いやりと愛情が全てだ。
ぶみ

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