マヒロ

ウーマン・トーキング 私たちの選択のマヒロのレビュー・感想・評価

3.0
とあるキリスト教系の集落にて、女性達が薬を盛られて強姦されていたということが判明する。目撃情報から犯人である男は逮捕され、男達は保釈金を払うために集落を離れるが、ほぼ女だけになった状況下で、男達を許すか戦うか話し合いが始まる……というお話。

ある時期から性被害を受けた女性にまつわる映画が同時多発的に作られるようになって、具体的には『プロミシング・ヤング・ウーマン』『最後の決闘裁判』『ラストナイト・イン・ソーホー』なんかが当てはまる。これらは、時代や背景は様々ながらどれもマチズモ的思想を啓蒙するようなメッセージ性と共に、抗いきれずに押さえつけられてしまった女性達を描いた悲観的な側面もある作品だったけど、今作はそういった被害を受けた上でどうするか?というところを丁寧に描いており、地味ながらなかなか新しい視点。

主要人物は、生きていく上ではそれでも男達と共存していくしかないと穏便に済ませようとするマリチェ(ジェシー・バックリー)、反対に加害者は絶対許すべきでなく殺しても構わないとまで言うサロメ(クレア・フォイ)、周りの意見を聞きつつ冷静に物事を判断しようとするオーナ(ルーニー・マーラ)の三人で、それぞれの意見をぶつけながら最適解は何か探っていくことになる。単に男女間の問題というだけでなく、この集落がキリスト教の保守的なコミュニティであるというところが大きく、男達に背くということは今の生活を捨てて神からも背くということになりかねないというのが話を難しくしている。
あまりにも質素な生活をしているので最初は昔の話なのかと思い込んでいたが、途中の展開で現代の話であることに気付かされるのに結構驚いた。『刑事ジョンブック』に出てきたアーミッシュの人々みたいに、キリスト教の教えに則って慎ましやかな生活をしている集団ということみたいだが、その中でこういう下劣な犯行が行われていたという事実が恐ろしい(しかもこれは実際にあったことをモデルにしているらしい……)。

基本的には会話劇だが、変に食ったことはせずにあくまで“女達はどうするか”というところのみに焦点を当てて、対話の中で揺れ動いていくそれぞれの考えを見せていく堅実さが良いところ。一方で、映画的には大きな見せ場があるタイプではなくひたすら会話の作品なので、そこまでのめり込めなかったのも事実。元々こういう舞台劇っぽい会話主体の映画は、よほど自分の中で何か引っ掛かる部分がないとハマれないことが多いんだけど、今作もそんな感じだった。丁寧な作りで退屈することはなかったが、ここら辺は好みの問題かな。

(2023.123)
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