CheshireCatYK

ウーマン・トーキング 私たちの選択のCheshireCatYKのレビュー・感想・評価

4.5
重い映画を観たくなる日ってあって、やっと観た。
Women Talkingというタイトルは、わざわざ「女性が」「集まって」「話している」と言わないといけないほど、それが特別な事と考えられていた、主張なんて一つもできなかったという事実を見せつけながら、そして何か、このTalkingをきっかけに明るい未来が開ける気がするという「希望」を感じるタイトル。
被害に遭った女性たちが観てもフラッシュバックが起きないよう配慮された結果なのか、女性たちが受けた心と身体のダメージについて明確に表しながらも決してgraphicにならないよう、それでいて何があったかを一瞬の1カットや短いセリフだけで明確に描く、隅から隅まで丁寧な描写に拍手を送りたい。

張り詰める空気、傷つけたいわけじゃないのに自分が傷つけられた一言でつい、相手にひどい言葉を浴びせてしまう様やジェシーバックリーの演技、そしてそれをぐっと耐えて一言一言丁寧に繰り出し、赦し自分も謝罪するルーニーマーラーの強さの演技に感動した。
ベンウィショーの未来を思うと辛いけれど、彼もまた彼女たちの勇気に手を貸すことで、少しだけ救われていたのかもしれない。

教養と愛情こそが、男たちの暴力、しいてはもっと広く今の言葉で言えばtoxic masculinity(有害的男らしさ)から男性を、そして女性を救える方法なのだ、というベンウィショー演じるオーガストの言葉が、少年たちのカットバック的映像演出もあいまって、なんかとても泣けた。そのセリフを言う前と後で、14歳の息子を連れて行くべきかという問いに対するオーガスト自身の見解が微妙に変わったように見えるのも、彼自身が考えながら答えを探っている描写としてリアルで良かった。

She Saidのレビューでも書いたけど、女性の未来のために動くこと、それはいつの時代も大きな勇気と犠牲を伴い、だけど、それによって作り出された「未来」に生きる人が「同じ物語」を語らなくて済むように、その未来のために、勇気を出して動くべきなのだ、と。性別だけではなく、人種や身体的特徴、その他アイデンティティーのために戦う理由は、すべて未来で同じ思いをする人がなくなるようにという願いであり、祈りなのだと。そんなメッセージが、強く心に刺さってきた。

余談ですがメノナイトはアメリカのペンシルベニア州で会ったことがあって、彼らは私と同じ観光ツアーに参加していたんだけど、お揃いの黒い靴はよく見るといろんなブランドの黒いスニーカー、カメラも持ってたので一緒にいた知人に「なぜAmishなのにカメラを持ってるの?」と聞いたら、彼らはメノナイトで、Amishのような生活を送りながら、時に電気やケータイなどのテクノロジーも取り入れているのだ、と。劇中でバンドエイドが出てきたのはこれを表してるのかなと思った。