てっちゃん

時代革命のてっちゃんのレビュー・感想・評価

時代革命(2021年製作の映画)
4.1
いつものミニシアターで鑑賞です。
朝早い時間にも関わらず7割くらいは埋まっていたんじゃねえのって感じで、皆さん早起き得意ですね。

初めに断っておきますが、恥ずかしながら2019年に香港大規模デモが起こったことは知っていましたが、その原因となったことやどのような人たちが何を目的としてデモを行い、今はどうなっているのかは知りませんでした。

なので、これから書いていくことは非常に読み応えがあり、香港事情に疎い私のような人間にもとても分かりやすく説明してくれているパンフや、私が感じた、今の私が思ったことを書いていくので、香港の歴史や政治については疎い点はご了承下さいませ。

これは今観なければいけない作品であり、ディストピアみたいな話だけど本当に起こっている話であり、近い将来の日本で起こらないとは言えないような話であり、それが起こったとき香港の人たちみたいな行動ができるのかが問われる作品であると感じました。

本作は香港の自由を守ろうとする民衆と国家との戦いを描いドキュメンタリー作品。

まさに戦い。
催眠弾や催眠スプレー、ゴム弾が国家(警察)から香港人へ容赦なく叩き付けられる。
それを傘やガスマスク、ヘルメットで防護するデモ参加者たち。
私が想像していたデモではない。
”内戦”と表現した方が適格ではないでしょうか。

デモの発端となったのは、犯罪容疑者の中国本土引き渡しを可能にする逃亡犯条例改正案が立法会に提出されたから。
中国共産党政府に反対する香港人を、地元警察が拘束し、中国本土へ引き渡しが可能になる。
つまりは中国から見た”敵”を握り潰し、事実上中国の言いなりになるおそれがあったのだ。

そもそも1997年に香港がイギリスから中国に返還される際に50年間は資本主義を採用し、社会主義の中国と異なる制度を担保された。
要は”中国”の”特別行政区”になった。
このことにより、政治と社会が安定し、ある程度は自由も与えられていたという背景がある。
それが崩壊したのが、”今”である。

参加者たちは「逃亡犯条例改正案の完全撤回」「普通選挙の導入」などを五大要求とした。
しかも驚くことにデモの主導者は”いない”。

SNSを駆使したり、テレグラムというメッセージ通信アプリ(電話番号を隠しIDのみで交換が可能。さらにプリペイドSIMカードをコンビニで買えば個人情報の登録不要。また、既読されると秒単位でメッセージが自動で消える。これを使うことにより情報漏れ警察に漏れるのを防ぐ。反面、誰でも参加できる=警察が潜り込んでいる)使ったりを駆使していたという。

デモ発表によると、2019年6月時のデモ参加人数は約200万人。
香港の総人口が約700万人であるから、その数の多さは言うまでもないでしょう。
しかも参加の大多数を占めるのが学生を始めとする10~30代の若者であるが、年配者の姿もある。

デモ参加者は、穏健派の「和理非派」と過激派の「勇武派」に分かれている。
しかしその2つが結託し、協力し合い、今回のデモを行った。

印象的だったのは、暴徒化していないこと(本作を観る限りはそのように見えた)。
例えば窃盗をしない。
我々は暴徒ではない。という現れだ。

国家(警察)とマフィアが協力しているのではないかという疑惑があり、市民が警察に通報しても、全く相手にしなかったりと、実際にそのような映像が本作で流れる。
もうこれだと、どっちが正しいのかがまるで分からなくなるし、明らかにおかしいのは、、、?ってなる。

当然のように本作は香港で上映されることはない。
本作で登場した人物たちは逮捕される(だからモザイクや顔を隠している人たちが多い)だろうし、デモ参加者たちの中には香港を離れてしまった人たちもいる。

コロナ禍により、デモ自体がなくなり、2020年6月に「香港国家安全維持法」が交付、施行された。
政治転覆や国家分裂の働きをしたものは(規定は曖昧)、国籍や犯罪行為をした場所問わず適用されるというもの。最高刑は終身刑。

日本は、まだ言論の自由があるし、普通選挙もある、、、しかしそれが徐々に崩れてきている節があるし、少なくともそうなっていくだろうと予見される。

まだ声を挙げられるときにやっておかなければいけないことが見えたように感じた作品であり、香港の現実を知ったことで少なくとも以前とは感じ方が変わった作品である。
何よりも、とてつもなくいろんな感情のエネルギーを持った作品であるということは言っておかなければいけない。

何も考えない、考えようとしないのは非常に危険なことである。
てっちゃん

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