ベビーパウダー山崎さんの映画レビュー・感想・評価

ベビーパウダー山崎

ベビーパウダー山崎

ARGYLLE/アーガイル(2024年製作の映画)

1.5

そこには何もなく、平坦で人工的で、薄っぺらに継ぎ接ぎされた都合の良さしかない。全身を整形しまくったラウンジ嬢の、型通りの接客を受けたかのような映画。表現者が骨や血を剥き出しにしてフィルムに魂を刻んでき>>続きを読む

ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ(2023年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

ほんの少し、自分ではない誰かの気持ちに寄り添い、他人を救ったとしても、だからといってその「誠意」によって日々が好転するわけでもなく、平穏で平坦な暮らしが崩れたその先で、人生はまだまだ辛くて厳しい道程な>>続きを読む

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(2023年製作の映画)

3.0

これだけ老いてもバカでかい規模でアメリカ映画を撮れる作家はスコセッシとリドスコぐらいしかいないんじゃないかな。スコセッシ映画のディカプリオは間抜け面しか見せていない。ディカプリオよりデ・ニーロの方が魅>>続きを読む

クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男(2019年製作の映画)

2.5

タラ坊と蜜月関係だったはずのワインスタインへの形だけのふわっとした批判。現代的な流れに目配せしながら、これまでも「女性が強い映画を撮ってきた」みたいな、さもこの作家は元から女性の味方であるかのように描>>続きを読む

ベッキー、キレる(2023年製作の映画)

2.5

ナメた相手が実は強かった系のこすられ過ぎのパターンだが、少女がネオナチに残虐復讐する前作がそれなりに足枷にもなっていて、定番の流れでありながら新しい何か(少女の成長)も見せていかなければならないわけで>>続きを読む

ゴーステッド Ghosted(2023年製作の映画)

2.0

娯楽に振り切った映画はおそらく世界中で行き詰まっていて、手っ取り早く持ってきた過去の優れた作品(本作なら『ナイト&デイ』)の恐ろしいほど劣化した愚作を、なんかクソつまんねえけど金払ってるから見るしかね>>続きを読む

マーベルズ(2023年製作の映画)

2.0

注意力散漫な子でも飽きないようにお人形さんを積極的に入れ替えたり、物語が理解できない子でも楽しめるようにお歌で世界をハッピーに見せかけたり、そもそも映画にまったく興味がない子でも騒げるように(ペットシ>>続きを読む

もっと遠くへ行こう。(2023年製作の映画)

2.5

無駄に原作も読んでいるけど、映画も無駄に見た。原作はクソしているときに読み切るぐらいの便所本程度。ほぼ原作通りなのに、映画は110分もある。なげー。一発ネタ(オチ)にまっしぐらの一本道なんだから80分>>続きを読む

セイム・プレイヤー・シューツ・アゲイン(1967年製作の映画)

3.0

その後の成功があるから、それっぽく見えてくる。卒業制作でこれ撮って、テレビ制作会社にでも就職していたら、キャバクラでの退屈な自分語り程度。「いまはバラエティーやってるけど、俺だって学生時代は尖った映画>>続きを読む

ワンダーガールズ東方三侠(1993年製作の映画)

3.0

子どもたちがシャボン玉を吹きながらのスロー、確かにジョニー・トー。死が迫る男とそれを見守るしかできない女の過剰な恋愛ドラマもあまりにもトー。障害(窓やドア)一枚かましての、すれ違いというか、いてほしい>>続きを読む

ファミリー・プラン(2023年製作の映画)

2.5

気弱なパパが実は凄腕の殺し屋だった…死ぬほどコスられている設定。もう何周もしているが、それでも世界各国で雑に作られ続ける永久機関。どれだけ大衆が「定番」を好むのかがよく分かる。昼飯は仕事場の隣りにある>>続きを読む

挽歌(1957年製作の映画)

3.5

不在だった母を高峰三枝子に求めているのは間違いなく、ともすれば父の役割は森雅之に背負わせていて、その父と夜をともにするのは近親相姦的なアンモラルさに酔いしれている風でもあり、結果としてその不道徳な行為>>続きを読む

ソルフェリーノの戦い(2013年製作の映画)

2.5

リアルを物語(フィクション)にぶっ込む構成は、まあまあある。その生の質感でドラマに強度を持たせようしている。どうですか、あなたの代わり映えしない日常と繫がっていますよ、と厚かましく言っている。
別れた
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PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

3.5

どう足掻いても窮屈になるTOKYOを、これだけ広がりを感じさせる「映画」に仕上げてくるヴェンダースはさすが。見慣れた日々のミニマルな暮らしもヴェンダースにとっては異国、その試み自体がすでにロードムービ>>続きを読む

ゴングなき戦い(1972年製作の映画)

4.5

日々の欲望に流され、ぼんやりと生きる己の道と薄暗い底へと転がり続けるステイシー・キーチが重なり、その「何者にもなれなかった」思いを書き綴った、映画ZINE『ORGASM・10』が発売になりました。他に>>続きを読む

ブラックベリー(2023年製作の映画)

2.5

ドキュメンタリータッチのような、そのドラマの真っ只中を陰から覗き見しているキャメラの動き。もうこういった手法で、偽のリアルを演出している映画はうんざりやね。見ていて疲れるし。当時の映像を挟みながら時代>>続きを読む

テリファー(2016年製作の映画)

3.0

低賃金で深夜に仕事してるおっさんとか心が病んだ女性をぐちゃぐちゃに殺してもなあ。もっと死んでほしい奴なんて、このクソな世界いくらでもいるでしょ。金持ちとかふんぞり返ってる上に向かって刺そうよ。
特定の
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クリスマス・ブラッディ・クリスマス(2022年製作の映画)

2.5

殺人ロボットサンタが遂に死んだ?と思わせてまだ生きている…が、二億回ぐらい繰り返される。やりすぎなしつこさは悪くないけど、そのパターン化された反復に対して、決定的なショットが撮れていないのがかなり気に>>続きを読む

殺し屋人別帳(1970年製作の映画)

2.5

今さら任侠も仁義もないだろと石井輝男が、その生真面目さにすっかり飽きているようで、メタと言うか、ヤクザ映画をやりながら、隙間を見つけては適当に遊びだしての90分。全編ギャグにするわけでもなく、由利徹で>>続きを読む

DASHCAM ダッシュカム(2021年製作の映画)

2.5

ネトウヨで陰謀論者の迷惑ユーチュバー。その女性を演じているアニー・ハーディも、トランプ主義者でノーマスクを訴えていたようなので、よくある手持ちガタガタのエセドキュメンタリーではあるが、その捏ち上げたフ>>続きを読む

兄とその妹(1939年製作の映画)

3.0

影でこそこそと卑劣な手段で陥れようとする者こそが悪であり、その「スパイ」な行いにはきっちりと「暴力」で制裁し己の正義を貫かなければならない。それが日本で生まれ育った「男性」の国民道徳であり規範である。>>続きを読む

御法度(1999年製作の映画)

3.5

『首』を見てから一応見返した。トミーズ雅が意外と良い。松田龍平が中心だが、軸になっているのはたけし。どれだけ物語が揺さぶられようと、たけしに戻れる強さがある。大島渚は役者を見つめる目は確か。
終盤に武
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(2023年製作の映画)

3.0

芸能界で頂点立って、映画でもそれなりに巨匠になって、それでもまだデタラメな表現で勝負しているの、普通に狂ってる。タモリは散歩してるし、さんまはテレビで笑いを突き詰めてるけど、たけしのこの創作意欲は化け>>続きを読む

キートンの鍛冶屋(1922年製作の映画)

3.5

キートンが平然な面して他人に迷惑かけまくる、いつものやつ。変わらず無表情だが、面が良いので画になる。若いころの鳥肌実ぐらい整っている。徹底して破壊し、白を黒く塗りつぶしていくアナーキーさ。しつこいのが>>続きを読む

ファミリー・スイッチ(2023年製作の映画)

3.0

親と子どもが入れ替わるベタな設定だが、母親役のジェニファー・ガーナーから『13 ラブ 30 サーティン・ラブ・サーティ』を嫌でも思い出す作りになっていて、それだけで十分だったりする。中盤のパーティーシ>>続きを読む

13 ラブ 30 サーティン・ラブ・サーティ(2004年製作の映画)

3.5

『ファミリー・スイッチ』を見て、久しぶりに見返したが最高。女性版『ビッグ』だが、全身で体当たりなジェニファー・ガーナーはトム・ハンクスに一歩も負けていない。嫌なキャラクターが、不可思議な状況に巻き込ま>>続きを読む

キートンの強盗騒動/悪太郎(1920年製作の映画)

3.5

キチガイキートンが無自覚に騒動を巻き起こす、いつものやつ。身体能力がアスリートなみ。逃げて、逃げまくって、横から縦に。昇ったり落下したり。映画の基本の動き。
頑張って笑わせようとするインディアンスみた
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異人たちとの夏(1988年製作の映画)

2.5

追悼で見た。原作が山田太一、脚色は市川森一。「市川森一が脚色を受けることが条件だった」と山田太一がエッセイに書いている。山田太一は市川森一の作家性を「センチメンタルでメタンコリーでノスタルジックな世界>>続きを読む

夜の鼓(1958年製作の映画)

3.5

おそらく初めて人を殺めた三國連太郎の手が固まってしまい、剣を握る指を一本ずつ剥がしていくリアリズム。『越後つついし親不知』では屑でいい加減、下卑た間男を演じていた三國連太郎、本作では真逆の(寝取られ侍>>続きを読む

マイ・ハート、マイ・ラブ(1999年製作の映画)

2.0

四組の男女をバラバラに映していく群像劇スタイル。一堂に会する終盤が見せ場だと思うが、しょうもない関係性。というか、それならはじめから「家族の物語」として正面からドラマで演技合戦させれば良いのに。こうい>>続きを読む

ザ・クリエイター/創造者(2023年製作の映画)

2.5

死が永遠の別れではなく、死を永遠の愛に結びつけるのはロマンチスト。犠牲のうえで成り立つ(一時の)勝利というのは『ローグ・ワン』でも試みていたが、はみ出し者に光が当たる(希望を持ち込む)物語を好むギャレ>>続きを読む

チャイルド・プレイ(2019年製作の映画)

3.0

チャッキーの面構えが生々しい醜男で笑ってしまった。殺戮人形こそ、まず可愛げが必要だと思うが、『菊次郎の夏』の子役以来の衝撃。子どもたちが見ている映画が『悪魔のいけにえ2』だったりして、コメディに寄せて>>続きを読む

ふたりのベロニカ(1991年製作の映画)

2.5

U-NEXTで終わる前に久しぶりに見直したが、本作を恐ろしくうまくパクった岩井俊二『ラブレター』の方が100倍好き。イレーヌ・ジャコブの髪型まで似せた中山美穂。揺れる手持ちキャメラから静と動の雰囲気を>>続きを読む

フィンガーネイルズ(2023年製作の映画)

2.0

なんかカッコつけてこねくり回しているけど、結局はいまの退屈な彼氏に飽きたので、新しい彼氏に乗り換えただけの話で脱力。機械による(絶対的な)愛情診断に抗い飛び込む、その心の衝動を見せたいんだろうけど、別>>続きを読む

THE FALLS(1980年製作の映画)

2.5

三時間以上(異常)ある。出鱈目な人物たちの出鱈目な人生(ドキュメンタリー風)の断片をただ繋げていく出鱈目な映画。有り物の写真や映像に適当なナレーションを乗っけて、別の意味をもたらすのはモンティ・パイソ>>続きを読む

皇帝のいない八月(1978年製作の映画)

2.5

男たちの世界に紛れこむ吉永小百合の存在が、役者の「恪」もふくめて映画を難しくしている。クーデターを起こす首謀者の妻としては態度が不安定で、渡瀬恒彦にどっぷりなのかと思えば、狂っていることを冷静に指摘し>>続きを読む

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