寝木裕和さんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

寝木裕和

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ウェンディ&ルーシー(2008年製作の映画)

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ウェンディには家族関係のこと、経済面のこと、… いろいろ事情がありそうだし、スーパーの店員、警備員、車修理工場の社長、その誰も、悪いわけじゃない。

ウェンディのことを気にかけてくれる警備員が、別れの
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ジャン=リュック・ゴダール/遺言 奇妙な戦争(2023年製作の映画)

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この、生涯通してパンクでアナーキーな作品をクリエイトしてきた作家の、一年半ほど前のこの世からの去り方には心底驚かされた。

今回、またもや、驚かされた。

なんせ、存在しない映画の予告編がこうやって上
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ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)

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主人公・ハディージャとその同僚たちは退社したと思しき仲間の話題に花を咲かせている。
「故郷に帰っても自慢してるはずよ。」
そう、この話題の種の同僚は移民労働者で、その話題をしているハディージャと同僚た
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落下の解剖学(2023年製作の映画)

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深い。
深すぎる… 。
まるで、雪渓に不気味な口を開いたクレバスのように、深い。

実のところ、サンドラは夫サミュエルを殺めたのだろうか?
勿論、この作品の肝はそこではない。

事故、自殺、他殺、…
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夜明けのすべて(2024年製作の映画)

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夜明けのすべて、とは、

すべての、夜明けを待ち侘びる者たちの物語。

「夜の闇があるから、遥か遠くのものの存在も分かることができる。」

パニック障害や、PMS の症状は経験したことがないけれど、「
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恋文(1953年製作の映画)

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日本の映画史において、二人目になる女性映画監督・田中絹代の第一作目。

これ、観始めてしばらくは、1953年公開ということもあり、さすがに時代錯誤的な描写が多いなと思わないではなかった。

主人公・礼
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ラ・ジュテ(1962年製作の映画)

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「せつない」という気持ちを、とても斬新な見せ方で紡いだ三十分弱の物語。
静止画、モノクロ、語られる静かな言葉。

その、ずっと続く静止画の中、突然動きだす女性。
心の中に生き続けていたありし日の誰か。
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時を数えて、砂漠に立つ(1985年製作の映画)

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昼下がり、どこかの庭でそっくりなお婆ちゃんとまだ歩くのもおぼつかない孫が椅子に並んで座る…

子ども用プールにいい大人たちがばか騒ぎして飛び込む… ああ、この時代はポケットのスマホのことなんか考えずこ
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僕らの世界が交わるまで(2022年製作の映画)

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テーマは、深い。

けれど、物語の結びが少し安直かな… と、思わないでもない。

この作品自体、ジェシー・アイゼンバーグ監督がラジオドラマのために作ったものをベースにしている。

なので、反目してばか
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ガートルード/ゲアトルーズ(1964年製作の映画)

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カール・テオドア・ドライヤー・セレクション Vol.2、にて。

たしかに、例えば「裁かるるジャンヌ」や「奇跡」などに比べると、宗教的だったり神秘的な感じは皆無だし、それまでの作風と完全に違うものに感
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ストップ・メイキング・センス 4Kレストア(1984年製作の映画)

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人生で500回くらい観てる作品を、IMAX体験で。(VHS 擦り切れるほど。)

今回のIMAX での上映で、個人的には少なくとも、ティナ・ウェイマスのベースプレイのカワイカッコ良さは3割以上増しして
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怒りの日(1943年製作の映画)

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カール・テオドア・ドライヤー・セレクション Vol.2、にて。

ドライヤーの作品は、例えば一つの確固たる正論で悪なる考えを正す… みたいな勧善懲悪的ストーリーとは真逆のような深淵さを、常に観るものに
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美しき冒険旅行(1971年製作の映画)

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よく分からないストーリー展開… と言われるけれど、本筋のところはかなり分かりやすく、というよりも本作のテーマが「 文明社会×大自然 」というわりと王道なものなので、難解では決してない。

とは言え、と
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哀れなるものたち(2023年製作の映画)

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話題の作品を一般公開初日に観にいくということを久しぶりにやってみた。

なるほど、確かに今までこんな形で「男性優位社会」や「家父長制」などについて突き詰めて描いている作品はなかったであろう。

冒頭か
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雨月物語(1953年製作の映画)

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溝口健二監督の最高傑作に挙げる人も少なくない、世界的名作。

テーマとしてはお金や権力よりも大切なものがあるのではないか… というとても普遍的なもの。

やはりそのテーマ性以上に、一貫して漂う怪しげで
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オールド・ジョイ(2006年製作の映画)

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この作品の主たる登場人物、マークとカートは久方ぶりに再会するのだろう。
しかしながら古くからの友人で深いところで理解し合っている… と同時にお互いのいろんな部分を分かってしまっているゆえに煩わしく思う
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裁かるゝジャンヌ(1928年製作の映画)

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今回、企画上映されている《カール・テオドア・ドライヤー・セレクション Vol.2 》の中で、唯一、前回のVol.1 でも観たものを、鑑賞。

前回観た時、衝撃だったのは、聖女ジャンヌ・ダルクの悲劇の物
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ファースト・カウ(2019年製作の映画)

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この映画のエンドロールまで辿りついた時、なにか重要なものを見届けたのに、それをすぐに誰かに的確に説明出来得ない… そんなものを目の当たりにしたと感じた。

映画館を出たあと、観たもの、なにか感じ入った
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お茶漬の味(1952年製作の映画)

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去年・2023年は小津安二郎の生誕120年、没後60年ということで、先月の小津の誕生日あたりになにか彼の作品を… と思ってこの作品を鑑賞。

田舎出身で質素な生活を愛する夫・佐竹茂吉と、裕福な家柄の出
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すばらしき世界(2021年製作の映画)

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事実に基づいたストーリー。

時代背景を除いて、本筋はほぼ、モデルとなった人物と同じ道筋を辿っている。

それでもなお、西川美和監督が彼の生き様になにを感じ、孤独にアパートで消えてしまった一人物の物語
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枯れ葉(2023年製作の映画)

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待望の、アキ・カウリスマキ監督の復帰作。

どうしたって不器用にしか生きられない二人の出会いと育ち始めた愛の話し。

この物語に触れて、もしかしたら物足りなさを感じる人もいるかもしれない。
普通だな、
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あるじ(1925年製作の映画)

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カール・テオドア・ドライヤー・セレクション Vol.2、にて。

面白い。
いろんな角度から言って、面白い。

まず、100年近く前のこの作品が、現代でもたびたび散見される、家庭の中での封建的な男性権
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ミカエル(1924年製作の映画)

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カール・テオドア・ドライヤー・セレクション Vol.2、にて。

モノクロではあるけれど、この絵画的映像美への拘りは、息を呑むほど。

裕福な画家、クロード・ゾレの、青年ミカエルに対する愛が描かれるの
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ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ(2018年製作の映画)

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これは観た後すぐに書いておくべきかな、と思い、したためる。
だって、夢というものは、そういうものだから。すぐに忘れてしまうものだから。

ラスト約一時間のワンカットは、トリッキーな部分ばかりで取り上げ
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軽蔑 60周年4Kレストア版(1963年製作の映画)

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美しすぎる妻… 女優でもある妻と、脚本家の夫、その二人の関係がふとしたきっかけで冷めきっていく様子を描き出す。

閉じられた場所(美しい地中海の島にある別荘で)、とある短い時間の中で、それは起こる。
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マエストロ:その音楽と愛と(2023年製作の映画)

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「 夏の歌が聴こえなくなったら、
音楽を作ることはできない 」

マーティン・スコセッシ&スティーブン・スピルバーグ - プロデュース、ブラッドリー・クーパー監督作、という豪華すぎる面々が関わっている
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Bi Gan | A SHORT STORY/ビー・ガン | ショートストーリー/壊れた太陽の心(2022年製作の映画)

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たった15分のストーリーながら、その短い時間の中で誰しも経験したことのある出会い/そして辛い別れを幻想的な映像表現で映し出す。

非現実的でドリーミーな物語展開で綴っていき、けれどラストできっぱりと現
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PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

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これは端的に言って「企業」と「特定の自治体」の映画だ。
ある企業と自治体が一体になって起こした事業があって、そこに芸術分野の人脈を巻き込み、作品めいたものを形にする。
その企業が大きければ大きいほど、
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王国(あるいはその家について)(2018年製作の映画)

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この言い方で合っているのか分からないけれど、とんでもなくクレイジーな作品だった。(とても、良い意味で。)

シナリオはとてもしっかりしていて、というかそれだけで考えさせられる内容なのに、驚かされたのは
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噂の女(1954年製作の映画)

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前作『山椒大夫』から三ヶ月を待たずして溝口健二監督が完成させた作品。

京都の花街を切り盛りする母と、その生業を嫌い拒絶する娘とを中心に描かれる物語。そこで働く女性たちや出入りする客たちの人生も絡み合
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ペルリンプスと秘密の森(2022年製作の映画)

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「なんでぼくたちは争い合ってるの!?」

中盤の、クラエとブルーオが抱きあうシーンで胸が締めつけられる想いがした。

と同時に、これは大昔の寓話ではなく、現代の話しなのだとこの時理解した。

… 個人
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悪い子バビー/アブノーマル(1994年製作の映画)

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この作品は、一体なんなのか…
それを考えていて、鑑賞してから随分時間が経ってしまった。

とにかく、スクリーン上には冒頭から幾つもの社会的にタブーな行為が映し出されて、観る人のなかには激しい嫌悪感を抱
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他人の顔(1966年製作の映画)

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アバンギャルドな設定、社会的にタブーと据えられそうなテーマに切り込んでいて、演出なども実験的だ。(とくに病院内のシーン。)

けれど、あるシーンで思わず吹き出してしまった。

事故で顔が変わってしまい
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ロイ・ハーグローヴ 人生最期の音楽の旅(2022年製作の映画)

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かのマイルス・デイビスは、事あるごとに言っていた。
「とにかく、ヒップであるべきだ。」

希代の天才トランペッター、ロイ・ハーグローヴの最期の一年間のツアーの模様を追ったこのドキュメンタリー作品を観て
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ルナ・パパ 4Kレストア版(1999年製作の映画)

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フドイナザーロフ監督作品の中でも、一際ドタバタなファンタジー。

主人公マムカラットを演じるチュルパン・ハマートヴァの天真爛漫な演技によって作品全体に躍動感が溢れている。

純白のドレスを父親に買って
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キャロル・キング ホーム・アゲイン ライブ・イン・セントラルパーク(2023年製作の映画)

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NY生まれ、NY育ちのキャロル・キングが、紆余曲折を経てNYセントラル・パークでフリーコンサートを行った時の模様。

もうコンサート第1部の、キングによるピアノ弾き語りから素晴らしい。名盤『つづれおり
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